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トランプ兵の反乱9

散々な週末を過ごし、今は授業も終わり放課後。
いつもの如く、僕は『ミス研』の部室にいる。
ただ、いつもと違うのはここにいるメンバー。
僕と春日さんはいつものメンバーだ。
だけど、三田先生と綿井さんもいるし、何より顔に痣のある服部さんがいた。
通り魔事件。
春日さんがどうケリを付けるつもりなのか知らないが、服部さんの痣は先ず間違いなく春日さんの仕業なんだろうな。
昨日の朝のオカシナ出来事があって僕は綿井さんをマトモに見られない。
だから、さっきから春日さんと服部さん、先生って順に見てんだけど誰も何も言わない。
先生は入って来た時からずっと春日さんを見てるし、服部さんもやっぱりそう。ただ、時折、僕を見てすまなそうに目を逸らすのが少し可哀想かも。
「おい、春日」
沈黙を破ったのは意外な事に綿井さんだった。
春日さんは目に掛かる前髪を軽く払い、綿井さんを見る。
「早く始めろ」
その言葉にフゥッと息をつき肩を竦める。
「気が短いのがいるから、始めるとするか」
そして静かに先生を見る。
「その前に確認させて貰えますか」
「な、何を?」
いつにないマトモな口調の春日さんに先生は面喰らったように目を瞬かせる。
「先生の『宿題』は通り魔にこれ以上、生徒が襲われないようにする事。そうですよね?」
「ああ、そうだ」
「それは必ずしも通り魔逮捕とイコールではない。つまり犯人を警察に引渡す事はしない」
「…そう、なるかも知れない」
少し考えて先生が頷く。
春日さんは服部さんを庇おうとしてるのかな?
確かにこれ以上、服部さんは女生徒を襲わないだろう。
でも、本当にそれでいいの?
「薄々、お分かりだろうとは思いますが。近頃、校内を騒がせていたのはここにいる、」
「綿井か?!」
春日さんの言葉を遮って先生が言う。
それに綿井さんが傍目にも分かる程にズッコケてる。
「何で俺がっ!」
それに小さく笑みを浮かべて春日さんが先生の考えを訂正する。
「いいえ、綿井は今回協力して貰ったので同席させたまでです。女生徒の首を絞め、『記念品』を奪っていたのは生徒会書記の服部です」
服部さんの肩が大きく震える。
「そんなっ、服部がまさか…」
日頃の行いって大切だよね。
先生は信じられないって顔で服部さんを見る。
でも、僕は春日さんの言葉が気に掛かる。
「あの、『記念品』って?」
「ああ、首に巻いていたモノだよ。週末の時は標準服のタイ。その前に私を狙ったのもコレが欲しかったんだろう」
首に巻いたチョーカーを指で持ち上げる。
黒いレースの縁取りのあるリボン。真中に飾られていた十字架がないので何だか淋しい。
春日さんはどんなに暑い日でもそれを付けている。
「最初の時は深く考えずに目に付いたヘアピンを取って行った。でも、それではダメだと言われて確実に自分が女生徒を襲ったと分かるモノにしたんだ」
誰にダメだと言われたんだ?それに確実に自分が襲ったって、何だか変な日本語。
僕の顔色を読んだのか、春日さんが言葉を続ける。
「実は襲われた時に逃げる犯人の後ろ姿を見て服部じゃないかなとは思っていたんだ。でも、服部に女生徒を襲う変態趣味があるとは思えなかったから、何か他に理由があるんだろうって思って調べた。そしたら五十嵐が知ってたんだよ」
「え、五十嵐さんが?」
「そう、真澄ちゃんだって一緒に聞いた筈だよ」
何を聞いたんだっけ?
首を傾げる僕に一言。
「妹さ」
何とも不似合いな言葉。
どういう訳なのか説明を求めたい。
当の服部さんは俯いたまま顔を上げないので仕方なく春日さんを見る。
「服部には目の中に入れても痛くないという程に可愛がっている妹がいる。カスミちゃんだ。彼女が服部を唆した結果、こんな莫迦げた事件が起きてしまったんだ」
「その…カスミさんは何て服部さんを唆したんですか」
誰も問わないので僕が春日さんに質問する。
「つい、最近振られてしまったカスミちゃん。付合っていた男はウチの学校の生徒だった。簡単な推測だよ。男の新しい相手はウチの生徒に違いない、って」
春日さんが嫌味を込めた流し目で綿井さんを見る。
もしかして。
「言い訳さして貰うけどな。俺はちょっと声を掛けただけだよ。二人で会った事すらないんだぞ」
綿井さんの言葉に春日さんは平然と頷く。
「そうだろうと思ってたよ。何しろ、これまで兄に守られて免疫ゼロなお嬢様なんだ。甘い言葉に心が傾いたんだろうね」
「人聞きの悪い事を言うな。俺の所為じゃないだろ」
「いいや」
尚も言い募る綿井さんにキッパリと言う。
「カスミちゃんが綿井に捨てられた事に原因はある」
「っ!」
綿井さんが息を飲む。
「カスミちゃんだって遊び人・綿井の噂は知っていた筈だ。平然と同時に複数の女性と付き合えるしょうもない奴だって。なのに綿井はカスミちゃんを捨てた。理由は簡単だろ?タラシの綿井に本命ができたから。カスミちゃんはそれが許せなかったんだ」
「復讐って訳か…」
綿井さんが耐えられないような噛み殺した声で呟く。それに春日さんがチラリと目を向けるけど、僕はそんな理由じゃ納得できない。
「通り魔事件を起こして、それが復讐になるんですか?だって、襲われた人達はその服部さんの妹さんと、綿井さんと何の関わりがあったんですか?あっ!」
そこまで言って何となく綿井さんを見る。
そんな僕の視線に綿井さんはきょとんとしている。
「違うよ。勘のイイ真澄ちゃんでもそれは違ってる。襲われた子は無作為に選ばれたんだ。ただ、襲うのに都合が良かっただけなんだろう。綿井とデキてた訳じゃない」
「なんだ、そうですか」
僕の誤解に綿井さんの顔が赤くなる。何だか少し狼狽えているみたいだけど、春日さんが言ったのは本当なのだろう。
綿井さんが狼狽えたのはそんな誤解を僕が一瞬でもしたって事なんだろうな。
「でも、それじゃ増々復讐にはならないんじゃないですか」
「私は復讐だなんて一言もいってないよ。カスミちゃんがしたのはただのハライセ」
「は?!」
僕と綿井さんの声が重なる。
「だってそうだろう。自分を振った男と同じ学校に通っていたと言うだけでどうして見ず知らずの女の子を襲わせなきゃならないんだ」
僕もそう思った。だけど腹いせだなんて襲われた子達には何の非もなかったと言うのだろうか。それじゃ、余りに不運だ。
「多少は綿井の想い人の見当ぐらいは付いていたんだろうけどさ」
そう言って春日さんが服部さんを見る。
「カスミちゃんに何て言われたんだ?」
「…」
服部さんは春日さんの視線から逃れるように顔を背ける。
その頑な態度に小さく溜息をつくと、春日さんが携帯を取り出す。
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