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トランプ兵の反乱10

どうやら相手はユノさんのようだった。
普段の脳天気な声を出す。
「お待たせ~。こっちに連れて来てくれるかにゃぁ?」
春日さんが通話を切って三十秒もしない内にユノさん登場。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん!」
場違いな程に明るく言うと背後にいた人物を無理矢理、室内に連れ込む。
知らない女の子だった。
フワフワの髪に色の白い、比較的可愛い感じのする子。
「服部カスミちゃんだ」
諸悪の根源、登場って感じ。
可愛い事は可愛いんだけど、ちょっと僕は避けちゃうタイプかも。
何だか気が強そうって言うか、我侭そうって言うか。世界は自分を中心に回っているって思っているタイプっぽい。
如何にも『女の子』って感じがして少し怖い。
カスミさんは俯いていた顔をキッと上げ真直ぐに春日さんを睨み付ける。
「何なの」
低い、押し殺した声で言う。
「突然、人の家に来て何すんのよ。莫っ迦じゃないの。住居不法侵入もいいトコよ。警察呼ばなかったのはお兄ちゃんと同じ学校みたいだったからよ!」
「違うだろ。君自身、警察に来られちゃ困るからだろう」
素っ気無い、冷たい声で春日さんが答える。
その言葉に一瞬、狼狽えの色が浮かぶが直ぐに言い返す。
「何、訳分かんない事言ってんのよ!どうして私が困るって言うのよ」
「知っているんだ」
「何を?!」
今にも春日さんに掴み掛からんとするように前身して手を伸ばす。
「やめろ…」
ポツリと呟かれた言葉。
それにカスミさんはハッとしたように始めて部屋の中に目を向ける。そして、
「お兄ちゃん!」
服部さんを見て傍に行こうとする。
だけど、服部さんはそれを拒絶してしまう。
「やめろ、来るな」
「…どうしたの?」
「全部、バレたんだ。俺はお前の所為で犯罪者だ」
「何…言ってんの?」
「ああ、別にお前が悪いんじゃない。お前に言われて断れなかった俺が悪いんだ。綿井に振られて元気のなくなったお前を見て、俺が決めた事なんだ。例えお前が指図した事であっても、実際に『通り魔』したのは俺なんだ」
「通り魔?何の事、お兄ちゃん?」
頭を抱えて蹲ってしまった服部さんにカスミさんが言う。
それに弾かれたようにカスミさんを見たのは服部さんではなく、綿井さんだった。
「何、言ってやがるんだ。お前が兄貴に言ってこの学校の女を襲わせたんだろうが!」
「あら、綿井さんお久し振り。でも、もう会わないんじゃなかった?」
「俺は会うつもりなんてなかったよ。でもお前の兄貴のした事の所為でこうしてここに集まったんだ」
「そうそう。通り魔…とか。何の話なの?」
「シラばっくれんのか?」
唖然とする綿井さんを手で止め、春日さんが再び口を開く。
「この学校の生徒が五人、通り魔に襲われたんだ。犯人はアンタの兄貴の服部。動機はアンタが頼んだから」
「え?本当に?」
とぼけようとしたのか、可愛らしくショックを受けているポーズを付けているカスミさんに僕は言葉もなくなる。
「言っておく。私にそのテは通じないから無駄だよ」
低く春日さんが嘲笑う。
それにカチンと来たのか、カスミさんは好戦的な目で部屋の中にいる人に目を向ける。
「先生、言い掛かりです。私は何も言ってませんし、そんな事には何の関わりもありません」
目に涙を浮かべ、三田先生に取りすがる。
「君…」
先生は驚いたように目を丸くする。
何をそんなに驚いているのか僕には分からなかったが、春日さんの目がキラリと光る。
「兄貴の学校に来た事は?」
「え、」
「ウチの学校は文化祭なんてないし、体育祭も父兄の来校は遠慮して貰っている。それでも来た事があると?」
春日さんの質問に暫し考えカスミさんが答える。
「ない、わ」
「そうか。ならば決まりだ」
「何がよ?!」
思わせぶりなその言葉が癇に触ったのか高い声で叫ぶ。それに春日さんは平然と答える。
「君が現場にいたという事が、だ」
「は?!何でそうなるのよ。そんな証拠、どこにあるって言うの」
「今、君が言った通り、そこにいるのは確かに教師だ。でも、どうしてそう分かった?ウチの学校は見ての通り制服の着用は生徒の自由にされている。そして三田先生は受け持ちクラスの生徒でない限り、皆間違えてしまうんだ。その童顔の所為でね」
そう言うと僕を振り返り言葉を続ける。
「最初、三田先生を見た時にユノの言葉を覚えているか?」
「あ…そう言えば本当に先生なのか、…って」
「ユノ、」
隅っこで壁に寄り掛かっていたユノさんが身体を起こす。
「う~ん、だってぇ生徒かな~って思ったんだもん。今でもビックリよ。本当に先生なのぉ~?」
言われてみればそうかも知れない。
教師の中で一番若く、僕だって学生気分の抜け切らないって思ってたんだ。
「紅林さんが襲われた時、先生は一緒だったんですね?」
「ああ…そうだ。俺がいたのに守ってやれなかった」
どこか呆然とした声で先生が言う。
「突然の事だった。本当にアッと言う間だったんだ。道に手をついて噎せている美也を見て、慌てて犯人を追ったんだ。でも、それがいけなかった。美也には俺が一人で逃げ出したように思えたんだろう。それから部屋に籠ったきりで、」
「先生と紅林さんの関係は?」
「兄妹だ。母が三年前に再婚して、俺は成人していたから籍を変えなかった」
「成る程。今回の依頼は妹の為だったんですね?」
春日さんの言葉に先生が頷く。
「今からでも遅くありません。妹さんのお見舞いに行って安心させてあげたらどうですか。妹さんは多分、先生の思っているような事で悲しんでいるんじゃないと思いますよ。事件から一度も先生が会いに来てくれないからちょっと拗ねているんじゃないでしょうか」
春日さんは先生の目を真直ぐに見て言う。柔らかく頬笑んでいるその姿は吃驚する程に優しさに満ちていて僕は言葉を失う。
「一人で逃げ出した俺を許してくれるだろうか」
「いいえ、先生は逃げ出したのではないでしょう?犯人を、妹を襲った悪漢を追っただけでしょう?それに犯人にもう二度とそんな事させないように私達に依頼したのでしょう。妹さんの為に」
「ああ、」
「なら平気ですよ。キチンと話せば分かってくれる筈です。何せ、血の繋がった兄妹なんだから」
春日さんの言葉に励まされたのか、先生が小さく笑顔を見せる。
「ありがとう、春日」
「どう致しまして」
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