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トランプ兵の11

先生が部屋から出て行くと春日さんが底意地の悪い笑顔でもう一組の兄と妹を見る。
「分かったか、この甘ったれ」
途端に言葉遣いが乱暴になってるし。
「愛情って言うのは押し付けたり、計ったりするモノじゃないんだよ。自分の兄貴を犯罪者にして楽しいかよ」
さっきとはガラッと変わって乱暴な言葉遣いになっている。
「知らないわよ。さっきのは何となく大人っぽい人だなって思ったから先生じゃないかなって思っただけよ」
「いいよ、好きなだけ嘘吐いてろ。こっちには物証があるんだから。ユノ、」
「はいは~い」
やけに明るい声で春日さんに近付くと何か差し出す。
それは小さな銀の十字架。
「私の、だ」
手の平で転がしながら歌うように言う。
「服部の家の二階の部屋にあったよぅ」
ユノさんが言う。
「ユノは有能~。駄洒落みたいだな」
一人ボケツッコミをしてカスミさんに向き直る。
「これでもまだ?」
「そ…れは私の」
「あ~ん、駄目ダメ。だって裏に名前彫ってあんだも~ん」
渡された十字架を良く見てみると、ホントだ。
小さくshionと彫ってある。装飾性の高い文字なので模様かと思ってしまいがちだけど、言われてみれば確かに春日さんの名前だ。
「シルバーの十字架なんてそこらでゴロゴロ売ってるからね。それに私と会う事もないだろうって油断したねぇ」
いい加減、諦めたのか春日さんの言葉にカスミさんは項垂れてしまう。
「…それで、どうしろって言うの」
泣いているのか声を途切らせながら訊く。
「ん~?何かイマイチ反省してないみたいだけどぉ。まぁ…ショ-ガナイか」
呆れたように肩を竦め、今度は服部さんを見る。
「『お兄ちゃん』の方は反省してるよね?」
その言葉に服部さんが躊躇うように小さく頷く。
「じゃ、家族で話し合って決めて貰いまショ」
「は?!」
その場にいた全員が声を揃えてしまう。
それがシメの言葉なのかい。
流石、春日さん。
行動と言うより思考が全く読めない。
「何だよぉ、皆してそんな声出して」
皆の反応に春日さんは不満そうだ。
綿井さんとユノさんが憐れみの籠った目で僕を見る。
え?
えぇ?
僕が春日さんにツッコミ入れなきゃイケナイの?
ユノさんに至っては肘で僕を押し出すようにする。
ハァと溜息をついて仕方なく僕は春日さんに言う。
「あの、こういう場合はもう少しその場の空気に合った言葉の方が皆は納得できるんじゃないでしょうか」
「んむぅ~?」
訳の分からない声を出して春日さんが僕を見る。
「その、何て言うか…その言葉に至るまでの春日さんの思考の経緯を教えて貰えたら、と」
「あ、そか」
ポンと手を打ち、改めて兄と妹を見つめる。
「別に見習えって訳じゃないんだけど。三田先生が妹の為にした行動、理解できるよね?妹が君に襲われて逆上しちゃって、妹の介抱よりも君を捕まえる事を優 先させてしまった。それでも逃げられてしまって、私達に依頼して来た。これって全部、妹の為にした事でしょう?なのに君たち兄妹はどうだって言ってんだ よ。妹が失恋しました。その腹いせに全く何の関係もない女の子を襲って下さい。よし、分かりました。そうしましょう」
長い台詞をそこで一旦、切るとのほほ~んとした顔つきで言う。
「妹がどんなに可愛くても犯罪はダメって事。飽くまで正攻法で行かないと、」
そう言うと、今度はカスミさんの肩を掴む。
「お兄ちゃんがカスミちゃんの味方なのはもう分かったでしょう?そんなお兄ちゃんを困らせるようなお願いはもうしちゃダメよん」
言うが早いがカスミさんの頭に拳を振り降ろす。
容赦のない一発にカスミさんはその場に尻餅をつき、呆然としている。
それを見て春日さんは爽やかに笑う。
「正義の鉄槌~」
「それだけ…?」
呆然としたように服部さんが呟く。
それに春日さんは笑顔全開で頷く。
「うん。だって、こんなの子供の喧嘩みたいなモンでしょ?」
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