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せみしぐれ7

 んん……。
 何だかホワホワとした明るい気分になる夢を見たような気がする。
 欠伸混じりに起き上がろうとして、何かにしがみ付いている事に気付く。

 何だろう。
 そう思って隣を見ると、こっちを向いて目を閉じている聖川の顔があってギョッとする。

 これは朝から心臓に悪いでしょ。
 起こさないようにそっと腕をほどいてから起き上がる。

 全く、黙ってれば顔だけは可愛いのに。
 昔はもっと女の子みたいだったな。
 ちっちゃくて丸くて、声だって高くて可愛かった。
 今より舌ッ足らずで、それが甘えているみたいに聞こえたんだよ、そう言えば。
 なのに今じゃ寝てる時しか可愛くないなんて。
 まぁ、そうさせたのは俺なんだけど理不尽な気持ちになっても仕方ないでしょ。

 ベッドから降りて着替えながら今日のスケジュールを確認する。
 ドラマの撮影は頭から順番にやるらしい。だから本当なら俺の出番は今日の午後からなんだけど、どうせオフだしスタッフと仲良くなっておきたかったから早めに入ったってワケ。

 シャワーを浴びて戻ると、いつの間に起きたのか聖川が私服に着替えてピシッと立っていた。
 いつも思うんだけど、姿勢いいよね。

 「具合どうなの?」

 手櫛で髪を整えながら聞くと「大丈夫だ」と素っ気ない返事が来る。
 それは良かったね、残念。
 へぇ、と。相槌を打ちながら鏡を覗き込む。

 「昨日は済まなかったな」
 「いいよ、貸しにしておくから」

 貸しなんて嘘。俺の方がお前に借りばっかり作ってる。
 でも、こう言わないと聖川は気にするんだから仕方ない。

 「ありがとう」

 え?
 今、お礼言われた……?
 ビックリして振り返るけど、時既に遅し。
 ドアの閉まる音がするだけで聖川の姿はなくなってた。




 午前中から撮影を始めて、何度か休憩と昼食を挟んでやっと終わったのは深夜に近い時間だった。
 思った通り、主演のレディは演技がイマイチだったけど、誰も気にしていないらしい。
 ま、アイドルが主演のドラマだから見栄えさえすればいいって事なんだろうけど。
 それに引き換え、聖川は見てるこっちが疲れるぐらい真剣そのもの。

 少し肩の力を抜けばいいのに。
 自分の出番が終わった後も見学してた俺の感想ね。

 軽く夜食でも貰おうかなって、人気のない食堂に降りてみるとスタッフの一人がコソコソと何やらしていた。
 音響アシスタントだっけ。一人だけガタイがいいからすぐに分かったよ。

 「何してるの?」

 声を掛けると、ビクッと大袈裟に飛び上がる。

 「神宮寺さん、驚かさないで下さいよ!」
 「驚いたのはこっち。こんな時間にこんな所で何してたの?」
 「頼まれて写真撮ってたんですよ」

 そう言って見せられたのは携帯の画面に写った人形だった。
 天井の明かりだけじゃ足りなかったのか、人形の傍に小さなランプが置いてある。それが下から照らしてるので、不気味な人形が更に不気味に写っている。

 「有名な作家が作ったかも知れないから調べたいって言うんスよ」
 その言葉に誰が頼んだのかピンと来る。

 主演のレディだ。

 可哀想だから連れて来たって言ってた割にそっちの方が気になるんだ?
 しかも、人に頼んでやって貰うって……へぇ、としか言いようがない。

 「あれ、何か写ってない?」

 髪をかきあげてそう指摘すると、スタッフも一緒になって覗き込む。
 足を投げ出して座る人形。その肩の辺りに不自然な光が写っている。

 「うわ、これってもしかして心霊写真スかね」

 どうだろう。
 人魂と言ってしまえばそれで通りそうではあるけれど、埃に光が反射しただけと言ってしまえばそれまでだ。

 「さあ?」

 どっちでも良かったから適当に答えてキッチンに向かう。
 軽く摘める物があればいいんだけど。
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