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女王の赤い薔薇5

当日は良く晴れていた。だが、何しろミステリーツアーなので集合は夜の六時。陽はとうに暮れて、辺りは薄暗い。
渡された懐中電灯を握りしめながらトボトボと歩く僕の足取りは重い。
準備の為、春日さんとユノさんは現地にいる。
そして案内役として、僕が参加者を迎えに集合場所まで向かっているのだった。
それは分かる。分かるけど……何だか釈然としない。
校門前に到着すると、既に参加者は全員揃っていた。
放課後、それも校内ではないと言う事で、全員ラフな私服だ。だけど、五十嵐さんだけは細身のスーツ姿でひと際目立っている。何なの、あの人。自分カッコいいとでも思ってるんですかね。まぁ、カッコいいけど。
しょうもない事を思いつつ、そちらに近づくと「遅い」と叱責を受けてしまう。
「案内役が遅れてどうする」
美形に真顔でそんな事言われたら誰だって「すみません」って言いたくなる。でも、春日さんに声を出すなって厳命されたのを思い出して、フルフルッと首を振る。
そんな僕を見て、五十嵐さんがふむと腕を組む。
「まぁ、その格好を見たら理由は分かるが……それは春日の趣味か、それとも君の趣味なのか?」
最悪だ。
案内役を命じられ、はいはいと気軽に頷いてしまった後に衣装を見せられた僕は心の底から拒否したくなった。
だって、それはそうだろ。水色のワンピースに白いエプロン、頭にはリボン。
ユノさんがいつか着ていたアリスのような衣装だったのだ。
スカートの下にはレースをふんだんにあしらったペチコートを履いているけど、やっぱりこれはどう見ても女装でしかない。
春日さんとユノさんは「可愛い」を連発してくれたけど、ちっとも嬉しくない。しかも、「これなら真澄ちゃんだって分からないよ」とまで言ってた癖に……五十嵐さんに一発でバレてますけど。
膨らんだスカートも、鬱陶しい巻き毛のウィッグも、顔に塗られた化粧も、こうなったら無意味だ。無意味どころか気まずい。そももそも、変装が必要な理由が知りたい。
「まぁ、いい。早く案内してやれ」
五十嵐さんの言葉にペコペコ頭を下げながら、後ろにいる全員に手で付いて来るように促す。
流石に声出したら男だってバレるし、春日さんから一言も喋るなって釘刺されてるし。
渡された地図を頼りに学校を出発する。
何かね……もう、これがまた春日さんの性格をあらわしてるって言うか。何が何だか分からない地図で困る。本当、困る。
ひっくり返したりしながら、だいたいこっちだろうなって歩いてたら後ろから肩を掴まれてビクッとする。
「そうじゃない、こっちだ」
耳元でそう囁いて、僕の肩を抱いたまま五十嵐さんが歩き出す。
え、何で。
どうして五十嵐さんが道を知ってるの。って言うか、知ってるなら僕が迎えに行く必要なんてないんじゃないの?
訳が分からず、呆然と足を動かしていてハッとする。
そうじゃない。何で肩を抱かれてるんだっての!
ジタバタ暴れて五十嵐さんの手から逃げる。
僕にだって警戒心ぐらいある。
何しろ、男に迫られてミス研に入ったのはちょっと前の出来事だ。そんなにホイホイ、男を誘ってるつもりはないけど、だからと言って気安く肩を抱かれて黙ってられるほど悠長な性格でもない。
金髪のウィッグの下から睨むけど、五十嵐さんは可笑しそうに唇を吊り上げて肩を竦めるだけだ。
何て言うか、手慣れてる。もっと警戒しないと。
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