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マッドハターでお茶会 1

いつものように放課後、部室に行こうとすると背後から呼び止められてつい立ち止まってしまう。
「え?」
目の前には見知らぬ、恐らく上級生だろうと思われる男子生徒。
マイナーな部活に入った事によって変に目立ってしまったのだろう。これまでにも何度か軽そうな人に声を掛けられた事がある。そういう時の対処法は曖昧に笑いながら後じさり、隙を見て部室までダッシュ。そのあとは部長の春日さんが何とかしてくれる。いつも、そのパターン。
でも、今日の人は何だか違う。
角刈りって言うのかスポーツ刈りって言うのか、よく分からないけど髪が短くて眉がキリリッとしている。硬派ですよーって外見が主張している。
「君塚真澄君だね?」
問われた声も低くて渋い。性別を見失った変態がナンパして来たのではなさそうだった。だから、つい「ハイ」と頷き返す。だって、男らしい眉の下にある目が縋るように必死だったから、それだけ重要な用事なのだろうと思った。
僕の返事を確認すると、有無を言わせぬ力で手を掴み引っ張るように歩き出す。
あれ。
判断ミスったかな、これ。
そう思ったけど、後の祭りだった。

「シオ~ン、大変!大変なんだよぅ!」
そう叫びながら部室に駆け込むと部長である詩音はソファに足を投げ出し大判の本をパラパラと捲っていた。
「あ、ユノ。丁度いい所に。お茶」
顔も上げずにそう命令するとまたもや本をパラリと捲る。
「ハ~イ…って、そうじゃなくて真澄ちゃんが大変なのぉ!!」
詩音の耳元でそう叫んでやると煩そうにではあるが何とか顔をこっちに向ける。
「何?また誰かに拉致された?」
それにコクコクと頷く。
ハァと溜め息とついて本を閉じる。表紙にはポップな絵柄。デペロと読み取り辛い字で書てある。何だろ?本のタイトルかな?それとも著者名?
「今月入ってこれで何度目?」
「ん~とね、六人目かな」
「今日が八日だから、土日を除いてほぼ毎日一人にコクられている事になるな」
「そうだね~。真澄ちゃん、モテモテだねぇ」
何だかホノボのしてしまう。
「相手が男でなければもっと良かったんだろうがな」
サラリとキツイ一言を付け足す。詩音はそういう奴だ。
詩音は元々、その人格が酷く掴み辛い。
いつだって誰かの口真似のような喋り方をするからだ。
だけど、真澄ちゃんが入部してからそれが変わった。
今みたいに物凄く素っ気ない口調になる。
多分、これが詩音の素なんだろうな。
「ユノもいい加減、慣れたらどうなんだ?」
その言葉にハッとする。
そうだ。真澄ちゃんが大変な事になってるんだったわ!
「ダメ~、今日のは特にダメ!あんなの許せない」
怪訝そうに詩音が眉を寄せる。
「だって、あんな不細工、真澄ちゃんに似合わないよ~!!」
呆れたように上を向いて溜め息をつく。何でそこで呆れるかな?
詩音って本当、不思議だわ。
「で、私にどうしろと?」
「勿論、助けに行くんだよね?」
ニコニコ笑って言ってやる。
口では冷たいけど、本当は詩音だって真澄ちゃんが心配なのだ。それも、物凄~く。
「厭なら自分で断るでしょ」
そう言うとまたもや本を開こうとするので強制没収。
「真澄ちゃんが厭がっても、相手が聞かなかったらどうすんのよ~」
「あ?」
「だって、今日のは空手部の主将だよ?真澄ちゃん、細いもん。絶対、力づくでどうにかされちゃうよ。厭がる真澄ちゃんを押し倒して…あぁ~ん、口ではとってもじゃないけど言えな~い」
詩音が目を細めて睨んで来る。
「ユノはその場にいたんでしょ。だったらユノが助けてあげればいいんじゃないの?」
うっ。
鋭い。
流石、部長。流石、詩音。女王様なだけはある。
「つまり、ユノもその相手が怖かったんだ?」
「だって、空手部だよ?骨とか叩き折られたらどうすんの~?」
「と、言うよりユノの場合、この状況を面白がってるように見えるんだが?」
あらあら、全部お見通しって訳ですか?
詩音は再び溜め息。おまけに疲れたように首を回してる。
スッゴイ馬鹿にされた気分。
「で、二人は何処に行ったの?」
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