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マッドハターでお茶会 2

春日さんのその声に慌ててドアを開ける。
廊下を歩いていたらユノさんの大声が聞こえたので、盗み聞きしてしまった。
ユノさんって、少し妄想癖があるよね。想像力が逞しいって言うか。
だって僕が三年生に呼び出されただけで、どうして押し倒されるって結果になるんだ。さっぱり理解出来ない。しかも、春日さんの声が洒落にならないぐらい低かったのもマズい。僕はいいけど、隣にいる三年生が危ない。
「スミマセン、ここにいます」
それに驚いたように振り返ったユノさんが歓声を上げながら駆け寄って来るが、ピタリとその足を止める。
僕の横にいる佐波さんに気が付いて目を細め威嚇するように低く唸る。
犬みたい…。
「この強姦魔!」
突然のユノさんの言葉に驚愕したのか、佐波さんは棒立ちのママ動けないでいる。
チラリと様子を窺うと、春日さんがソファで小さく肩を竦めていた。フォローする気ないんですか、あなた。
仕方ないから僕がユノさんに向けて恐る恐る説明を試みる。
「あの、ユノさん違うんです。佐波さんは春日さんに何か相談したい事があるそうで」
「えぇ?!」
口を開けてユノさんが佐波さんと春日さんを見比べる。
「止めて置きなよ~。詩音はそりゃ、美人さんだけど性格がムチャクチャ悪いんだから~。詩音にするならやっぱり真澄ちゃんの方がイイよ~。可愛いし、素直だしぃ」
たった数秒前の自分の言葉を忘れたのか、ユノさんが何故か佐波さんに僕を推薦している。もっと自分の発言に責任を持って下さい、本当に。
「いえ、そういう話ではなくて…このミステリ研究会に何か依頼したいみたいなんです」
佐波さんが慌てた様子で僕の言葉に頷く。
それを胡散臭そうに見ていてユノさんだったがやがてクルリと振り返ると春日さんを見る。
「どうする?」
「追い返せ」
素っ気ない言葉。
こうなる事は予想が付いていた。
春日さんは基本的に気紛れだ。極度の面倒臭がりとも言える。この前のミステリーツアーだって、企画したはいいけど自分で動いたのは最後だけだったし。
「お願いします!もう、ここに見捨てられたら俺、どうしたらいいか…」
佐波さんがその巨体で涙ぐむ。
それにギョッとしたのは僕だけでなくユノさんも同じだったようで、先程の仕打ちなど忘れたように春日さんに喰ってかかる。
「何で~?!こんなに必死なんだからぁ、話ぐらい聞いてあげてもイイじゃないぃ」
うん。取りなしてくれてはいるんだけど、その間延びした喋り方。
物凄くバカにされてるような気になるんじゃないだろうか。
そう思って佐波さんを見ると矢張り、本当に泣き出してしまった。
男泣き…って言うより苛められっ子みたいだよ、その泣き方。
ウェッウェッと嗚咽を漏らしながら佐波さんが泣いて、僕は少し呆れてそんな佐波さんを見て、ユノさんも困ったように春日さんを見て、春日さんは涼しい顔で手元の本をパラパラ捲っている。
「春日、いるか……って何だ、これ?」
グッドタイミングなのかバッドタイミングなのか生徒会長の五十嵐さんがノックもせずにドアを開ける。
佐波さんの泣き声で苦情が来ないよう、五十嵐さんを無理矢理引っ張り込んでドアを強制的に閉めてしまう。
「何の見せ物だ?お、空手部の佐波じゃないか。何だ、春日に苛められたのか?」
それが当たらずとも遠からずで、僕には答えられない。
佐波さんが何度も頷いている。
それを見た五十嵐さんは実に嬉しそうに春日さんを見る。
本当、見た目からは想像付かないほど性格が歪んでる。
「春日ぁ、弱い者苛めしちゃイケマセンって教わらなかったか?」
「ハッ、空手部の主将なんだろ。私より弱い訳ないじゃないか」
確かにその通り。
でも精神的には佐波さんは春日さんより弱いんだろうな。
「どう見ても春日の方が強そうだぞ」
莫迦かコイツみたいな目で春日さんが五十嵐さんを見る。
僕だったらそんな目で見られたら悲しくてビルの屋上から飛び下りたくなってしまうだろうけど、流石は五十嵐さん。全く動じる気配がない。
「春日より佐波のが弱いと思う人」
と、言って手を上げる。
つい、吊られて手を上げてしまう。
ユノさんは自信満々に手を上げている。
佐波さんまでもが泣きながらも手を上げている。……って、それでイイのか空手部主将?
「ホラ、全員一致で春日が強いという事になったぞ」
春日さんはその言葉に本を置くとスリッパをはいて立ち上がり、五十嵐さんに向かい合う。
「この暇人」
「お互い様」
小さく舌打ちすると春日さんはユノさんを振り返り言う。
「お茶」
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