スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

マッドハターでお茶会 3

特別にチョコを出してあげる。真澄ちゃんにあげるついでだし、詩音に散々泣かされて可哀相だったし。
レトロな銀紙に包まれたお菓子。こういうお菓子探すのって実は大変。
製造してない訳じゃない。でも、今どきは流通に適した物しか店頭に並ばないんだな。しかも売り上げはガッチリ管理されてるから、少しでも売れなかったらすぐに姿を消してしまう。だから当然コンビニなんかでは売ってない。
じゃ、どうやって?
そんなの、このユノさまが小売りもしてくれる問屋を一軒一軒回ったからに決まってるじゃない。
趣味の為には何だってやる。バカバカしい事ほどガムシャラに。
でも、これを買って来た労力を思うと、何だか食べちゃうのが勿体なってしまう。
詩音は無言で紅茶をすする。
猫舌め。
サラサラヘアの白皙の美人がどうして音立てて紅茶をすするかなぁ。
「私が美人だが性格の悪い部長の春日だ。で……?」
うわぁ、さっき言った事、根に持ってるよ。
しかもキツーイ目つきで佐波を見てるって言うか睨んでる。
ちょっと怖いかも。
「助けて下さい!」
その場に土下座せんばかりの勢いで佐波が言う。
それでも詩音の目は冷たい……じゃ、なかった。
完璧、興味ありませんって感じで真澄ちゃんの食べ終わったチョコの包装紙を器用に折り曲げてる。
「もう毎晩、毎晩眠れないんです。夜になると女の声がどこからかして、」
佐波って多分、同級だよね。何で敬語?
「どうしてウチに?」
「この前のミステリツアーの話、聞きました。例の幽霊を退治したんですよね?!」
ズルッと椅子からずり落ちてしまう。
どうやったらそういう話になるのぉ?
詩音はムチャクチャ怒った顔で五十嵐を見る。
五十嵐も詩音を見て軽くウィンクしてる。
ヤぁラシイ。
二人で見つめ合っちゃって。しかもお互いにしか通じないテレパシーだ。ま、この二人は特別だし、以心伝心ぐらいしちゃうでしょ。
フンと詩音が鼻を鳴らしてバカにしたように五十嵐から目を反らす。
何だかなぁ。この二人って仲がイイのか悪いのか。
そんな無言のやり取りに気付いてないのか、佐波が堰を切ったようにベラベラ喋ってる。
夜中に声がして目を覚ますと、嗄れた女の声が恨みつらみを呟いているらしい。そこですぐさま心霊現象って思っちゃう辺りどうなのって思う。まずは戸締まりの確認でしょ、普通。
それを聞いてるのか聞いてないのか、詩音が何やら目を伏せて考え事している。
何を考えているんだろ?
多分、何も考えていない。詩音はそういうヤツ。
やがてスゥッと目を開き、真直ぐに佐波を見る。
何だか別人みたいに厳かな口調で言う。
「分かりました」
それに佐波が目を輝かせ、身体を前に乗り出す。って、言うより真澄ちゃんまでもが面白そうに詩音を見つめてる。
何する気なんだろう、詩音は。
「お守りを渡します。この鶴が貴方の身を必ずや守ってくれるでしょう。これを肌身離さず持ち歩いて下さい」
そう言って何か銀色に輝く折り鶴を佐波サンに差し出す。
佐波サンはハハァッとか言いそうな姿勢で畏まってそれを受け取る。
……って、えぇ?!
その物体の正体に気が付いて詩音を見るけど涼しい顔。
五十嵐はヤレヤレと肩を竦めているし、真澄ちゃんも興味が失せたのかアカラサマに欠伸なんてしている。
だけど佐波は至って真剣で……。
何だか少し可哀相になって来たかも。
大泣きしたとは思えない程、爽やかな笑顔を残して佐波が立ち去るとボソッと五十嵐が言う。
「この詐欺師」
「ペテンですよね」
真澄ちゃんまでもが五十嵐と同じ意見を述べる。
「何の事かな。それより多忙な筈の生徒会長はどうしてここにいるんだ?」
詩音の言葉にハァッと溜め息をついて五十嵐が答えようとするけど、ちょっと待て。
「今のなぁにー?」
何か訳分かんない内に解決しちゃったみたいでツマンナーイ。
「夜、眠れない言うから眠れるようにお守りを渡したんだよ」
シレッとして詩音が言う。
「だってチョコの包装紙でしょ?」
でも何でただの包装紙がお守りになるの?
「このバカが下らない噂を流してくれたオカゲで勘違いした野郎が来た。ここまではイイ?」
ウン。そこまでは了解。
小さく頷く。
「誤解だって説明しても無駄だろう。大体からして何でヒトの尻拭いを私がしなくちゃイケナイんだ、しかも五十嵐の。だから誤解はそのままに、相手の求めるモノを与えたんだ」
「それがあの鶴?」
「何でもイイんだよ。それらしく演出してやれば」
「カワイソウ、騙したのー?」
「人聞きの悪い。心霊相談なんてハナから範疇外だし、大体からして今の……佐波は騙されたかったんだ。私が悪い訳じゃない」
今の間は名前を覚えてないからなのね。
それにしても。う~ん、確かに詐欺に引っ掛かるのはその人が騙されたいって思う気持ちもあるからって聞いた事あるけど。
「で、五十嵐は何の用だ」
切って捨てるように五十嵐に目を向ける。
こういうトコロが冷たいんだよね、詩音って。
いっつも最後までコッチに付き合ってくれないんだもん。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。