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マッドハターでお茶会 4

ユノさんがウンウン唸りながら茶器を片付ける。
春日さんのした事に納得できないのだろう。
佐波サンの相談は矢張り心霊相談。廊下を歩いている時にうわ言のようにブツブツ呟いていた内容と照らし合わせてもそれしか考えられなかった。
何でも夜、部屋に一人でいるとどこからか低い唸り声と女の囁き声がするらしい。何と言ってるのか聞き取れないそうだけど、如何にも恨んでますって声だとか。確かにそれはちょっと厭だ。
だけど、確かに心霊相談は春日さんの守備範囲ではないし、何よりそんな話に春日さんが真面目に付き合う筈がない。
「お茶会」
五十嵐さんが唐突に言う。
「何の事だ?」
「ミステリツアーにまつわる噂だ。超絶美少女を囲んでのお茶会があったってな。まぁ、最初に篩いに掛けられた奴はそう思っても仕方ないだろうな。何せ、目的がさっぱり分からないまま追い返されたんだから」
五十嵐さんの言葉にドキッとする。否、正確にはビクッとした。
何だか厭な予感がする。
「で、是非ともミステリ研究会にもう一度、ミステリツアーをやらせろ、或はそのお茶会だけでもやらせろって投書が殺到している」
「部費は潤ったので当分その予定はないね」
切って捨てるかのようにあっさりと春日さんが言う。
それにフッと嗤う五十嵐さん。何か秘策でもあるのだろうか?
「……」
春日さんが目を細め、そんな五十嵐さんを睨み付ける。
「確かに。ミステリ研究会にメリットはないな」
お、意外な事に五十嵐さんが認めた。
それでも春日さんは細めた目のままジッとしている。明らかに警戒しているって感じ。
「ミス研主催のミステリツアーに超絶美少女が現れたんだから、当然その美少女はミス研の関係者だって誰もが思うよな。どうする?」
突然、五十嵐さんが僕を見る。
「え?」
どうするって、何が?
首を傾げていると春日さんが小さく舌打ちする。女の子なのにハシタない、とかは思わない。
「ミスった、」
「まぁ、仕方ないな。春日だってまさかここまで評判になるとは思ってなかっただろうし。あ、それともこうなるのを見越して『アリス』の出番を準備してなかったのか」
「煩い」
小気味良いリズムでやり取りする二人の会話はまるで意味が通じない。
苛立ってる春日さんに五十嵐さんが目を細めて笑う。
「ま、どちらにせよもう手後れだ。俺一人じゃ止められないな」
「嘘をつけ」
「ホントだよ」
「……何が何でも『お茶会』をやらせるつもりなのか」
「悪いね」
全く心の籠っていない声で五十嵐さんが答える。
「真澄ちゃん、ごめん」
春日さんが突然、謝って来る。
訳が分からずぼんやりしてしまう。
そんな僕を放って五十嵐さんに再び向き直ると物凄くテキパキと話を進める。
「で、いつなんだ?」
「来週の土曜日はどうだ?」
「一人幾ら」
「1000円が限界だな」
「何人ぐらい集まりそうなんだ」
「多すぎると安っぽくなるから前と同じぐらいでいいだろう」
「じゃ、7:3」
「アコギだな。せめて6:4にしろよ」
「何言ってんだか。大事な部員を貸出すんだ。それぐらいイイだろ」
「会場費にセッティングにこっちは実働なのにそれは無理ってモンだろ」
「じゃ、いい。私に害はないから」
何だか訳の分からない話を切るように春日さんが僕を見る。
何だか厭な予感。
「真澄ちゃん、ほんとごめんね~」
久し振りに軽い口調。でも、目が全然、笑ってない。凍える程に冷たい目をしている。
ハッキリ言ってかなり怖い。
「恨むならバカな噂流した誰かさんを恨んでね~」
「あ、卑怯じゃないか」
五十嵐さんが慌てたように言う。
「あの……?」
ん?と二人してこちらを向く。
「一体、何のお話をしているんですか?」
僕の言葉に二人とも動きを止める。
そのまま一秒、二秒。
「ククッ、」
最初に堪え切れなかったのは五十嵐さんだ。
口元を押さえて肩を震わせている。と思ったら仰け反って爆笑し出した。
それに吃驚していると春日さんまでもが目に涙を浮かべて笑いを堪えている。
「カ~ワイイ!ナイスボケ!!」
引くって。これは絶対に引くって!
思わず三歩下がった時、洗い物を終えたユノさんが腰に手を当ててやって来る。
「もぉう~、シオンも五十嵐も。そんなんじゃ真澄ちゃん分かる訳ないじゃん!」
怒っててもフワフワしていて可愛い。
「ちゃんと説明してあげなよぅ。訳も分からずに売られちゃったら真澄ちゃんが可哀想でしょう~?!」
確かに。
訳分かんないデス。
でもその前に。
「売られる?」
僕の漏らした一言にユノさんが振り返る。
「そうだよー。この二人は真澄ちゃんを売り買いしようとしてんだよぉ」
「え……じゃ、『お茶会』は生徒会が主催するんですか」
「そうそう。ウチとは関係ない生徒でしたってパフォーマンスだね。だから生徒会に真澄ちゃんを貸出しって事になる。こんなアホと一緒に行 動するのは厭だろうけど、でもこのまま『アリス』がウチの人間って定説が出来上がっちゃうとどうしてもその正体がバレちゃうからね」
ヘラヘラ笑いながら春日さんが言う。美人なのはこの際、マイナスポイントになりそうだ。
そう、か。
考えるまでもない。ユノさんも春日さんもあの場にいたんだ。だからそれ以外の部員が『アリス』って事になると残りは……僕か。
「そりゃ、もう分かってる奴もいると思うけど、確信はないだろうから特に口止めなんて必要ないでしょ。でも噂にはなるね。そして噂には尾ひれってモノが付くから、どうしても美少女=『アリス』=真澄ちゃんって図式が出来上がっちゃう訳よ」
それをカムフラージュする為に生徒会でお茶会をやるのか。
で、お互いの取り分で揉めてたって訳か。
何だか脱力……。
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