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マッドハターでお茶会 8

沈んで行く夕陽を見ながらちょっと悲劇ぶッてみる。
今の生活に不満はないけど、だからと言って過去がなかった事にはならないでしょ。
でも、いつまでも過去を引きずるなんてガラじゃないって分かってるから、ここらでケジメ付けようとしたんだよ。
諸悪の根源、過去の汚点、黒歴史。
思い出すだけでワーワー叫びながら足をバタバタさせたくなる。そんな思いをしなくてもいいように、キッチリと佐波に復讐して終わりにしようと思ったんだよ。
高校に入って、血を吐く思いでダイエットした。身長はどうしようもないから、せめて細くなりたかった。筋肉で筋張った手足なんかいらないって思った。欲しかったのは白くて華奢でお人形のような外見。
それを得る為に努力したんだ。
なのに肝心な事に気が付かなかった。
佐波が同じ高校だなんて考えもしなかった。知ってたら進路を変えた。でも、違う学校に行ってたら詩音とも出会えなかったんだよねぇ。そう思うと色々と複雑だわ。
人生ままならない事ばかりでウンザリしちゃう。
ハァって溜め息とつくと、遠くから悲劇とは程遠い間延びした声。
「ユ~ノぉ、」
大好きなシュークリームを片手に振りながら詩音が呼んでいる。
一人になりたかったのにぃ。
「ホラ、」
近くまで来ると当然のようにシュークリームを一つくれる。
無言で受け取って口に入れる。
「反省した?」
その言葉を無視してモグモグと口を動かす。
「私の好きなユノは素直なイイ子なんだけどなぁ」
そう笑いながら鼻を摘まんで来る。息できない!!
慌てて飲み込んでプハァッて息をする。
「ちょっと卑怯だったね」
詩音が優しく言う。
「……うん、」
「よし、それが認められるなら大丈夫。未遂だったんだし、もう忘れよう」
もう一つシュークリームをくれるからついエヘヘとか笑っちゃう。もう本当に詩音には適わないなぁ。

「あの……一体、」
無言でいても仕方ないので五十嵐さんに言ってみる。
「ん?」
「ユノさんと佐波さんって」
「ああ、中学時代の知合いだよ」
五十嵐さんが机の中をゴソゴソやりながら答える。
「どうしてユノさんが……その、毒を?」
「多分、毒じゃないと思う。ユノにそんなモノ仕入れる事はできないから恐らく洗剤か何かだろう。腹痛でも起こせばいいとでも思ったんじゃないのか。俺も考えが浅かったね。ユノが佐波を今回誘うって言った時に気付くべきだったよ」
そう言うと目当てのモノを見つけたようで僕の横に並んで座る。
カチッと音がする。
見てみると呆れた事に煙草を吸っている。
まだ高校生で生徒会長なのに。
「中学の時、ユノは負け知らずだったから試合で佐波に負けたのがよっぽど悔しかったんだろうな」
「え、試合って?」
「佐波は何部だ?」
「……空手」
「そういう事だ」
ふぅんと納得し掛けて気が付く。
ユノさんって空手やってたの?
あんな細いのに!
「高校入って細くしたんだよ。それまでの自分を忘れたいからってな」
そこで五十嵐さんは何故か笑い出す。
「まぁ、実際は試合の所為ではないだろうな。ユノはああ見えて真っ当な人間だから、負けを認められないほど弱くはない。だから佐波と揉めたのはお互いの感情が上手く噛み合ってないと知ったから、と私は考えている」
「感情……ですか……?」
訳が分からず問い返すと、さほど吸ってなかった煙草を灰皿に押し付けてしまう。それからヒラヒラと手を振って煙を払う。
「ユノは佐波の事を頼れる先輩と思っていた。いつか越えるべき壁のように思い、仲間として尊敬していたんだと思う。でも、佐波の方は違ったんだ」
「えっと……ユノさんを嫌ってたとか?」
「その反対だ」
嫌いの反対は好き。それの何が問題なのか分からない。
キョトンと首を傾げていると、五十嵐さんが困ったように小さく笑う。こういう顔を誰にでも見せているのかな、だとしたらとんだタラシだ、この人。
「佐波はユノが好きだったんだよ、恋愛対象として」
「ああ……それは、うん」
言動が変とは言え、ユノさんは可愛い。喋らなければ本当にお人形のような可愛さなのだ。
だから佐波さんがユノさんに恋愛感情を持つと言うのも分かる気がする。まぁ、僕はユノさんに惚れる事はないけど。
そして、二人の仲が拗れたのも頷ける。
佐波さんがどんなにユノさんを好きでも、ユノさんはそうじゃないのだ。嫌いだったら話は簡単だったのかも知れない。でも、恋愛対象としてではないがユノさんが佐波さんに抱く感情もまた『好き』なのだ。ユノさんからしたら複雑な心境だったろう。これまで仲間と思っていた相手なだけに裏切られたと思ったかも知れない。
「だから佐波さんのお茶に何か入れて復讐しようとしたんですか?」
「復讐なんて大袈裟なものじゃないだろう。嫌がらせ、いや腹いせと言った方が近いんじゃないかな」
何を混入させたのか知らないけど、確かにユノさんのキャラを思えばそちらが正解な気がする。訳の分からない言動だし行動も突拍子ないけど、サッパリした性格なのだ、ユノさんは。
「あれ……でも、佐波さんは変わる前のユノさんが好きだったんですよね?」
「ああ、告白したと聞いたが」
「だとしたらユノさんの外見に惹かれたって訳じゃないんですね」
変わる前がどんなだったのか知らないけど、空手をしていたくらいなんだ。それなりの体格をしていたんじゃないのか?
そんなユノさんに告白するほど好きだったと言う佐波さん。
それって本当に心の底からユノさんの事が好きって事なんじゃないかな?
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