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極上の趣味 4

何だか怖い。
一年前の入学式で始めて西垣を見た時、宮森はそう思った。
それなのに学年が違う上に生徒会長と関わる事もないだろうと、すぐにその存在を忘れてしまった。
だが、一ヶ月ほど経ってふと気付いた。
どこに行っても視界の隅に西垣が映るのだ。
最初は目立つ外見の所為だと思った。しかし、どうやら気の所為ではないと覚ったのは、食堂で隣に座られた時だった。
この学校の食堂はメニューが少ない。カレーとうどんと日替わり定食しかない。
その為、生徒たちから人気はなく、いつだって空席だらけなのだ。
但し、値段は驚くほど安い。カレーは200円だしうどんは150円。一番豪華な定食ですら300円という破格の値段だった。
古本屋に入り浸り本を買い漁っていた宮森にとって学食は、心強い味方なのだ。
だから、その日も一人で一番安いうどんを啜っていた。常連となった所為か、揚げをサービスして貰った。
はふはふとそれを噛み締めていると、隣の椅子が引かれ生徒会長の西垣がそのまま着席した。
その手には日替わり定食である目玉焼きハンバーグ。
学食の常連である宮森だったが、いまだ定食は食べた事がなかった。だから羨望の眼差しを向け、続けて他にも席が空いてるのにと思った。
パーソナルスペースって物がないのだろうか。
親しい訳でもない人物とガラガラな食堂で並び合うと言うのは何とも気まずい。だから宮森はうどんの入ったどんぶりを手に席を一つずれた。すると西垣も同じように移動する。
無言のままそれを何度か繰り返し、壁際に追い詰められてしまった。
そこに来て漸く、何か用があると分かった。
校則違反とか注意されるのかな。
頭髪に関しては教師の許可を得ているが、ピアスはどうやっても違反だろう。そう諦めて顔を向けると、思いのほか厳しい目で睨まれておりギクッと首を竦めてしまう。
怖い、いきなりピアスもぎ取られたらどうしよう。
そんな恐怖にプルプル震えていると、西垣が無言のまま目玉焼きを宮森のうどんに乗せて来る。
「へ?」
キョトンと目玉焼きを見て、西垣の顔を見上げる。
相変わらず怖い顔で宮森を凝視している。
これは……自分が嫌いだからお前が食べろって事ですか。
そう理解した宮森は口の中に目玉焼きを押し込み、うどんのつゆで流し込む。きつねうどんだった筈なのに火の入り過ぎた月見うどんになってしまった。
そんな事を考えながら後ろも見ずに逃げ出した。
それが西垣とのファーストコンタクトだった。
それ以降、学食は避けたので西垣との接触はない筈だったのだ。
しかし、思い通りに行かないのが人生である。
チョコチョコと視界に映り込むのだ、麗しの生徒会長さまの姿が。
見られていると思うのは、ただの自意識過剰。そう自分に言い聞かせたが、周囲の反応を見る限り、そんなレベルではないのだろうと分かる。
移動教室で廊下を歩いている最中、体育の授業で柔軟をしている間、教室に引きこもっていても、ジットリとした視線を感じてしまい半ばノイローゼのようになっている。
能天気な所のある宮森だが、流石にこのままではマズいと思った。
ピアスを引きちぎられるのは厭だったが、教室で遠巻きにされるのも辛い。言いたい事があるならいっそ言って欲しい。
そう思い、自分から西垣に接触してみた。
結果は惨敗だった。
まず怖い。盗み見るだけなら爽やか好青年なのだが、宮森の姿を視認した途端、その身に纏う気温が五度が下がっているような気がする。ブリザードだ。
恐怖に竦みそうになる足を叱咤して、何とか近づき「あの」と声を掛けた。
ありったけの勇気を振り絞った。あんなに頑張った事はないと断言出来る。
だが、宮森の言葉が続かぬうちに西垣がポケットに手を入れた。凶器を取り出すのかと咄嗟に身構えた。だが、その手に握られていたのはビーフジャーキーだった。
訳が分からずポカンと見つめる先で西垣は封を切り、宮森の口に押し込んで来た。ビーフジャーキーなど食べた事のない宮森にはかなり不味い物に思えた。と言うか犬の餌かと思った。
なに、お前なんか犬と同じだって事なの?
条件反射でハムハムと口を動かしながらも涙目だった。
怖い、もう無理。
思い出すだけで震えが来る。
その恐怖の対象が至近距離にいる。気絶したい。
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