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極上の趣味 5

宮森の必死の願いも虚しく、意識はシッカリしたままだったし西垣は一歩近づいて来ている。
カタカタと震え出した宮森の様子に気付いたのか、松村が「大丈夫?」と囁いて来る。
それに大丈夫ではないと答えたいのだが、西垣から目を逸らす訳にも行かない。
前はビーフジャーキーだったけど、とうとうドッグフードを食べさせられるのだろうか。
泣きそうな目で西垣を見ると、ポケットから何やら取り出す。
その手に握られていたのは、ビーフジャーキーでもドッグフードでもなく、一通の手紙だった。
「へ……?」
先ほど松村に見せられたのとそっくり同じ封筒。宛名が書いていない所も同じだった。
「午後三時に図書室。これを書いたのはお前か」
手紙を見せながらする質問まで同じだった。
「ち、違う!」
吃ってしまったのは恐怖の為だが、否定しないと何をされるか分かったものではないので宮森は答えられただけ偉いと自分で自分を褒める。
「西垣も手紙貰ったの?」
そう言ったのは松村だった。そちらにチラリと視線をくれて、小さく頷く。
A.Sめ、どこの誰だか知らないがお前の所為でとんだトバッチリだ!
恐怖がそのまま怒りとなって宮森の頭を支配する。
手紙さえなければ、西垣に恐怖する事はなかったんだ。クソ。
言葉にしなかった分だけ感情を持て余し、宮森は髪をグシャグシャと掻きむしる。
突然の行動に驚いたのか、松村と西垣が見つめて来るのが分かる。
「何で俺があんたらに手紙出さないといけないんだよ。用なんかないし、話もない。もう放っといてくれよ!」
そう怒鳴って、西垣をビシリと指差す。
「特にお前。何で俺のこと睨んで来るんだよ。俺が何かしたってのか?だったらちゃんと口で言え、コミュ障かってのこの野郎!」
思いのまま大声で怒鳴り、ハァハァと肩を上下させる。
スカッとするなんて、とんでもない。宮森は荒い呼吸を整えながらも、「やっちまった!」と後悔していた。十秒前に戻って自分の口を塞ぎたい。だが、そんな事が出来る筈もなく、気まずい沈黙が図書室に流れる。
何とか落ち着いたが、顔を上げる事が出来ない。どんな目で睨まれているのか、それを想像しただけで泣きながら逃げ帰りたい気分になってしまう。
だが、「アハハハ」と能天気な笑い声がして、ポカンとする。
松村が可笑しそうに口を開けて笑っていた。
「アハ……宮森くんは見た目と違うんだねぇ」
「は?」
そんな風に言われたのは始めてだった。
中学までは寧ろ考えなしだの単細胞だの、暗にバカだと言われていた。
だが、思い出してみれば高校に入って誰とも親しい付合いをしていないのだ。外見で誤解されたとしても無理はないのかも知れない。
「見た目って、俺のことどんな風に思ってたんですか」
「そうだね……気が弱そうで大人しくて、一人でいると危なっかしくて守ってあげたいって感じかな」
高校に入って一年と数ヶ月、誰かさんの所為でずっと一人でしたが何か?
「メシもトイレも一人で行けますが」
そう言い返すと、松村がうんうん頷く。
「やっぱり別人だよ」
そう言って西垣を見る。それに倣っておそるおそる視線を向けると、生徒会長は唖然としたように宮森を見つめていた。
一般生徒、しかも宮森如きに怒鳴られて吃驚したのだろう。
そう軽く考え、ふんと鼻を鳴らす。
幾ら人気あるからって何をしても許されると思ったら大間違いだ。
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