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極上の趣味 6

目を逸らしたついでに松村と西垣が持っている二通の手紙について考える。
呼び出しに応じて素直に図書室までやって来たのだから、手紙の差出人に心当たりがあったのだろう。それなのに、どうして宮森をそうだと思ったのか。
「本当に違うのか」
念を押して来る西垣の視線が鬱陶しい。
乱暴に頷き返すと、「マジか」と頭を抱え込む。
どうしたのだろうかと怪訝に思いながら視線を戻すと、松村が口元を押さえて忍び笑いを漏らしていた。
「まぁまぁ、勘違いしたのは西垣だけじゃないから」
そう言って、首を傾げるしか出来ない宮森を見る。
「ちょっと人違いをしてたんだよ」
その言葉にふと気付く。
もしかして、これまでの西垣の行動は宮森を誰かと勘違いしてたのが原因なんじゃないのか。だとしたら本当にとんだトバッチリだ。
「はぁ……誰と?」
徒労感に襲われ脱力したまま問い返す。松村はそれに困ったように小さく微笑み答えるつもりはないらしい。
「それより、僕たちの他にも呼び出されてると思った方がいいだろうね」
アッサリと話を切り替え、西垣を見る。いつの間に復活したのか、西垣が「ああ」と落ち着いた様子で頷き返す。
「辻と久保は呼び出されてるだろうな。他にも森橋とか」
何を根拠にそう思うのか知らなかったが、宮森には関係のない話だ。下校時間も近いのだし、そろそろ解放して欲しい。
この学校では下校時間以降の居残りを禁止している。
何故なら時間になると警備会社の監視カメラが作動するからだ。人影を目撃次第、警備員が学校に駆けつける契約になっていると言う。噂では同時に警察に通報も行くとか。
その為、事前の許可を得た者を除いて居残りはペナルティを課せられる事になっている。それは良くて停学、最悪の場合は退学という重いものだった。
そして今日は職員の研修があるとかで下校時間が早めに設定されている。午後四時までには何としても校舎を出ないといけない。あと一時間。
こうしてはいられない。
ソワソワと落ち着きをなくした宮森を見て、松村が「大丈夫だよ」と言う。
何が大丈夫だと言うのか。高校中退なんて、どう考えても家族が許してくれないだろうに。
「下校時間を過ぎたからってすぐ監視カメラが動く訳じゃないんだよ。校内に誰もいないか、生徒会が見回りをする事になってるんだ」
その言葉に西垣を見ると頷かれてしまう。
「普段は見回りをしたら教頭に報告するだけだが、今日は校舎の鍵を預かっている」
へぇ、と感心する。そこまで教師から信頼されてるのか。
だが、おかげで少しぐらい遅くなっても退学になる危険は免れたと言う事だ。ホッとしたのも束の間、西垣がグイと手を掴んで来る。
「見回りついでに他にも誰か呼び出されていないか探してみよう」
え、何で。
生徒会長である西垣が校舎の見回りをするのは納得した。だが、宮森はしがない図書委員なのだ。しかも、気の所為でなければ他の委員からハブられている。
そんな宮森が見回りに立ち会う必要など微塵もない。ないどころか、さっさと立ち去るべき立場だろう。
だが、松村までもが「そうしようか」と相槌を打つ。宮森の意見は無視らしい。
そのまま廊下まで引きずられ、「お」とか「あ」とかしか声が出ない。
「荷物は教室か?」
そう問われて漸く「離せ」とその腕を振り払う。
見てみると、手首にクッキリと赤い痕が付いている。どんだけ強い力で掴んだの。
ヒリヒリと痛む手首を摩りながら宮森は言う。
「何で俺が一緒に行かなきゃなんないんだよ」
当然の不満をぶつけると、松村がポンポンと肩を叩いて来る。
「一緒に行かないと校舎に閉じ込められるかも知れないよ?」
「へ?」
「図書室の鍵を掛けて教室に鞄を取りに行って靴を履き替えて外に出る。普通なら10分もあれば済む筈だけど、手紙の件があるからね……足止めされないとも限らないんじゃないかな」
「手紙の差出人は俺じゃないって」
「うん。それを信じた上でなんだけど、僕と西垣が手紙の差出人を君だと思ったのと同じように他にも受け取った人が思ったとしたらどうなると思う?」
「どう……って、」
図書室でのやり取りを思い出し、ウンザリする。
先ほどは松村がすぐに信じてくれたので、それに流されるようにして西垣も追求をやめた。だが、松村がいなかったらどうなっていただろう。
延々と「お前だろう」、「違う」の繰り返しだったんじゃないだろうか。
「だから全員で行動した方がいいと思うんだ。大丈夫、見回りと言っても校舎だけなんだから三十分もあれば終わるよ」
納得出来るような出来ないような、微妙な説得だった。
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