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極上の趣味 9

廊下に出た所で、松村と森橋と合流する。どうやら全員で宮森を迎えに来てくれていたらしい。
心配してくれたのは有り難いが、ただ森橋の目つきが気に入らない。
宮森を気味悪そうに見ているのだ。
しかも松村にコソコソと何やら話しかけている。感じ悪いったらありゃしない。
「いい加減、説明して欲しいんですけどー」
宮森の言葉に、森橋は目を逸らし松村が肩を竦める。西垣は前にも増してキツい目で睨んで来る。だから何故。
「念のために確認するけど、宮森は前からずっと宮森って名前だよね?」
松村の質問に訳が分からないままコクンと頷く。
「じゃ、青って名前も?」
「オヤジが紺で偶然オフクロが翠って名前だったから面白がって付けたって聞いた」
「へぇ」
興味を抱いたのか、松村が相槌を打つ。
「じゃ、本当に別人なんだね」
「だから誰と」
「佐川アオイ。僕たちに手紙を出したと思われる人物だよ」



佐川アオイ。
イニシャルはA.S。
成る程、手紙の差出人と一緒だ。
でも、断じて宮森ではない。
三年生に知合いなど皆無だったし、西垣は兎も角として、松村と森橋に言いたい事なんて何もない。
キョトンとする宮森を見て松村がそっと苦笑する。
「小学校の同級生なんだ……いや、だったと言うべきか」
不自然に言い直したのが気に掛かり、宮森は首を傾げる。
「どういう事ですか」
「自殺したって聞いている」
そこまで聞いてピンと来る。
ここの屋上から飛び降りたのは佐川アオイなんじゃ……でも、そうだとしたら森橋並びに三年生が宮森と佐川アオイを同一視していたのと矛盾してしまう。
「発見が早かったから一命は取り留めたらしいんだよ。でも、それきり学校に来なくなったし、家も引っ越してしまったらしく誰もその後の消息を知らないんだ」
だから?と宮森は首を傾げる。
名前が違うし学年も違うのだから、同一人物と思う方がおかしいのだ。それなのに森橋と恐らく西垣もそう思っているのだ。その根拠が分からず、宮森はキョトンとするしか出来ない。
「一命を取り留めたって言っても大怪我には違いないだろうから治療に時間が掛かったと思っても無理はないだろう?名前もご両親が離婚してとか、そういう事なら変わっていてもおかしくない、そう思ったんだよ」
苦笑混じりに松村が説明してくれる。
成る程。
宮森にしてみたら、物心付いた時から今の自分なのだから佐川アオイとは別人だと分かり切っている。だが、第三者にはそれが分からないと言う訳だ。
外部からやって来たよそ者、しかもどうやら顔が似ているのだ。勘違いしたとしても無理はない……いや、待て。
そこまで考えて宮森は西垣を見る。
かつての同級生だと思ったなら、本人にそれを問い質してみればいい。それをせずにジットリと睨んで来るって事は……佐川アオイと何かあったのだ。しかも、西垣だけでなく、松村も森橋も。
そして佐川アオイは自殺している。小学生の自殺と聞いて真っ先に思い当たる理由は一つしかない。
イジメだ。
つまり、この場にいる三年生たちは佐川アオイをイジメていたか或いはそれを傍観していたのだろう。だから、そっくりな宮森を見て気軽に声を掛ける事が出来なかったと言う訳だ。
「バカらし……」
宮森の目の前にいる三人は、全員が校内の有名人だ。憧れる女子は数知れず、もしかしたら男子だって憧れている奴がいるかも知れない。生徒会長の西垣、サッカー部主将の森橋、成績トップの松村。
それなのに、同級生をイジメで死なせ、今もまだそれを引きずっている。
「だいたい分かったんで、もう帰っていいですか」
佐川アオイの名を使って誰かが三人を呼び出した。だが、それは宮森と何の関係もない。
そう思ったので、そのまま質問したのだが西垣が「ダメだ」と答える。
「どうして」
問い返した宮森は自分でも思ったより尖った声が出た事に驚いてしまう。
だが、すぐに納得する。
松村と森橋はただの臆病者だと割り切ってしまえる。だが、西垣だけはそうじゃない。
過去に死なせた佐川アオイと似ている、それだけの理由で今もまた宮森を孤立させている張本人なのだ。
「宮森には話がある」
「俺にはないんですけどね。でもいいですよ、さっさと言って下さい」
人生、開き直りと言うものが必要だと思っている。
だから、宮森は内心の恐怖を無視して西垣を見据える。
用件が済めば、もう足止めされる事もないのだ。そしたら今日は久々に古本屋巡りでもして帰ろう。
そんな事を考えていると、「ここじゃ言えない」と西垣が言う。
だったら、どこでなら言えるんだよ。
そう声に出さずツッコミを入れるが、背後から「西垣!」と女の声がして気勢を削がれてしまう。
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