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極上の趣味 17


宮森が己の不運を嘆いている間も西垣の話は続く。
「あとで他の電話やパソコンも試してみるが、今のところ外部への連絡は不可能だと思っていい。そして玄関は開かないし、通用口も鍵がないと開けられない。この週末は職員の研修旅行があって、おまけに月曜日は祝日だ。俺たちがここを出られるのは火曜の朝と言う事になる」
三日間。
職員の予定など分からなかったが、ここまでお膳立てした奴なのだから西垣の言う通り、校舎が開かれるのは火曜の早朝なのだろう。
この場にいるのは三年生が七人に宮森と一年の翼、計九人。
全員が無事に校舎から脱出するにはどうしたらいい。
「そこで提案だ。これから二つのグループに別れて校舎を探索しようと思う」
そう言うとグルリと見回して続ける。
「女子と森橋、松村、吉野はどこか安全な所で待機。その他は俺と一緒に校舎内をもう一度見て回る」
「冗談じゃねぇ!」
真っ先に辻が抗議の声を上げる。
「どうして俺がお前なんかと一緒に行動しなきゃなんねーんだよ!」
だみ声で怒鳴る辻を冷たく見つめ、西垣が「監視させてもらう」と言う。
「隠しても無駄だし意味がないから正直に言わせて貰う。待機組は兎も角として巡回組は生徒会として監視させて貰おうと思っている」
え、自分も?
宮森は首を傾げて己の顔を指差し、そのままの姿勢で翼を見る。
過去にあったイジメが原因で校舎に閉じ込められたのなら、宮森と翼は部外者の筈なのだ。それなのに西垣は辻と同じく、宮森も危険人物と見做しているらしい。何故だ。
「巡回と言っても四人で行動出来ない場合もあるだろうから、その時は俺と辻、翼は宮森と一緒に行動してくれ」
翼がそれに頷く。
それを見て理不尽だとは思ったが、二手に別れる時は、翼と一緒に行くと聞かされ、仕方なく妥協する。ここで言い争ってても埒があかない。だが、宮森と違って納得出来ない人物がいた。
辻だった。
「ふざけるな!」
傍にある椅子を蹴飛ばし、大声を上げる。
「誰がお前の言う事なんか聞くかよ。行くぞ、吉野!」
「行くってどこに?」
そう冷静に問い掛けたのは松村だった。
同じ小学校の出身なのだから、辻の噂は知っている筈なのだが、臆した風もなく飄々とした顔つきでいる。
「そんなのお前らに言う必要ねーだろ!」
「でも、何かあった時に居場所が分からないのは困るよ。それぐらい辻だって分かってるだろ」
そう言ってズレてもいない眼鏡を押し上げ、ニッコリする。
宮森はその笑顔にゾッとする。
表面上は笑顔だが、松村は苛立っているのだ。怒っていると言ってもいい。
普段大人しい人物が怒ったら怖い。目の当たりにして、宮森は漸くそれを理解した。
辻もそう思ったのか、チッと舌打ちをする。
「資材室にいる」
少しだけ怒りをおさめたらしく、辻が低い声で答える。
資材室と言うが、実質的にはただの物置だ。使わない机や椅子があるだけだ。
そんな所に用のある人間もいないから、一部の生徒達が溜まり場として使っているらしいと聞いた事がある。
「鍵を持ってるんだね」
「ああ。何かあったら知らせに来い」
それだけ言うと、吉野を連れて辻が出て行ってしまう。
呼び止めようとする者はおらず、寧ろホッとしたような空気が流れる。西垣ですら黙り込んだまま動こうとしなかったのだ。
それだけ辻が厄介だと言う事なのだろう。
「カイチョー、いいの?」
監視すると言っていたのにアッサリ引き下がったのが不思議だったので、コソッと訊ねる。すると「構わない」と返事がある。
「資材室の廊下側にバリケードを積んで置けば辻と吉野は外に出られないって事だからな」
閉じ込める気か。
宮森が唖然としていると、西垣が涼しい顔で続ける。
「どうせ自分達から外に出る事はないだろうし問題ないだろう」
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