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極上の趣味 23

首を捻って考え込んでいると、図書室の戸が外から開かれる。
トイレに行った連中が戻ったのかとそちらに目を向け、宮森は眉を寄せる。
見覚えのない顔だったのだ。
半袖のシャツに白いベストを着用しており、ベルト通しにウォレットチェーンを掛けている。天然なのか緩くウェーブした髪は金色に近い茶色で、顔立ちがほっそりとしており、服装さえ違っていたら女の子に思えたかも知れない。
「あ、良かった。誰かいた」
気安い口調でそう言うと、スルリと中に入って来る。
その仕草は猫のようにしなやかで色っぽい。
「保健室で寝てて起きたら誰もいないんだもん、焦ったよ」
誰にともなくそう言って先ほどまで久保がいた席に座る。
「誰ですか」
宮森がそう問い掛けると、「えー」と不満そうな声を上げる。
「そっちこそ誰なの?」
お互いに面識がないと言う事は学年が違うのだろう。こんな馴れ馴れしい口調の一年生がいるとも思えなかったので、恐らく三年生だ。
その推測を裏付けるように松村が口を開く。
「ヨシユキ、お前ずっと寝てたのか?」
宮森は記憶を手繰って、その名前を思い出す。
久保の双子の兄弟だと言っていたか。兄か姉か分からないが、双子なのでどちらでも構わないのかも知れない。
松村の言葉にコクンと頷き、久保美雪がペラペラと喋り出す。
「だって今日ってば自習ばっかりだったじゃん。教室にいてもヒマだったから抜け出してサボってたんだよね。そしたら寝過ぎちゃったらしくてさぁ、起きたらやけに静かだわ、帰ろうとしたら玄関閉まってるわで、どうしたものかと思って。取りあえず誰かいないか歩き回ってたら話し声が聞こえたからここに来たって訳よ。んで、俺帰りたいんだけど」
戸田が突き落とされた事を知らない所為なのか、ヨシユキの口調はあっけらかんとしていて軽い。
その落差にグッタリと疲れてしまい、宮森は溜め息をこぼす。
松村がこれまでの出来事を説明すると、ヨシユキは「へぇ」とどうでも良さそうに相槌を返す。
「んじゃ、火曜日までここにいるしかないって事?」
「多分、そうだと思うよ」
松村がそう言うと、ヨシユキがコテンと首を傾げる。
「でもさ、夜になったら誰か見に来るかも知れないじゃん?」
「どうして」
「だって、校舎中の電気付いてたら目立つでしょ」
そうか。
宮森はヨシユキの言葉にハッとする。
空調が動いていると言う事は電気が来ているのだ。ならば、夜になって辺りが暗くなれば、明かりの付いている校舎は目立つ筈だ。もしかしたら近隣の住民が学校に連絡してくれるかも知れない。そこから警備会社に連絡が行けば、見回りの為に校舎の玄関が開く筈だ。
だが、そこまで考えて疑問を抱く。
電話線を切るような犯人なのだ。どうして電気も遮断してしまわなかったのだろう。
「携帯だ」
携帯電話の電波を遮断する装置がこの学校にはあるのだ。電気を遮断してしまったら、それも止まってしまう。だから犯人は電気だけはそのままにして置いたのだ。
「もしかしたら犯人は夜までに決着をつける気なのかも」
何を言おうとしたのか理解したのだろう。宮森の言葉に西垣が険しい顔をする。
松村も困ったように沈黙してしまうが、ヨシユキだけは相変わらずあっけらかんとしている。
「ああ、そうかもねぇ」
腕を組んで、うんうん頷いている。
「今の話が本当だとしたら、もう戸田を殺しちゃったんだもんね。犯人は後には引けない状況って訳だ」
それはそうだ。犯人は既に人を殺しているのだから、何としても目的を遂げる筈だ。
ならば、どうする。簡単だ。
全員殺してしまえばいい。
校舎に閉じ込めた生徒たちがグループで行動するであろう事は犯人にも予測できた筈なのだ。ならば全員が一カ所に集まるであろう場所に爆弾でも仕掛けたらいい。
「そんな……」
宮森は自分の想像に愕然とする。
一人でいたら狙われる。だが、グループでいるのも危険なのだ。
どうしたらいい。
「最善の策は、二人から三人のグループに別れて夜は明かりをつけないって事かな」
松村がそう提案して来る。
確かに、それ以外ないだろう。
ならば、次の問題はどうやって分けるかだ。
辻と吉野は既に別行動なので、考えなくて構わないだろう。他に八人。
二人では流石に心細い。ならば、三人か四人に分けるべきだ。しかし、出来るだけ少人数でいた方がいいので、三人のグループが二つと二人で行動する班が一つ。これがベストだろう。
「島津と久保は分けられないだろうから、僕がそこに入るよ」
松村が当然のようにそう言う。
宮森としても、西垣と松村は別のグループにいた方がいいと思ったので、それに反対するつもりはない。
「あの兄弟は一緒にいたいだろうから、ヨシユキ。お前はそこに入れ」
西垣の言葉に宮森はキョトンとする。
森橋兄弟が互いにブラコンなのは既に知っている。それに非常事態なのだから、肉親と一緒にいたいという気持ちは当然だ。
しかし、久保美雪をそのグループに入れるのは何故だろう。
説明を求めて西垣を見るが、アッサリと無視されてしまう。
「陽が暮れるまでに対策を考えよう。鍵が掛かるのは、ここと生徒会室、あとはヨシユキが寝てたんだから保健室も入れるだろう。保健室に松村たち、生徒会室にヨシユキ、ここには俺と宮森が残る」
その言葉にギョッとする。
西垣に対する恐怖は既に麻痺していたが、二人っきりでいるのは勘弁して欲しい。
だが、先ほどのグループ分けで残った宮森と西垣が一緒に行動するという事になる。
うわぁ、マジか。
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