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極上の趣味 24

トイレに行っていた連中が戻ったところで、経緯を説明する。
ヨシユキがいるのを見て、久保が露骨に顔を顰めたが、別行動だと聞かされ何も言わなかったので、その場では問題にしないで置く。
かき集めた食料を分け、緊急時の連絡方法を決める。
校舎の電気は極力消すと言う事に決まった。
近隣の住民に通報され、犯人がヤケを起こすのを防ぐためだ。
ならば、暗いのを利用してスマホで照らすという事になった。犯人にも居場所を知られてしまうが、他に方法はなかった。
翌朝まで無事だったら、拠点を変えた方がいいという松村の提案で朝の六時に生徒会室で落ち合う事になった。
特に反対意見もなく明るい内にと言う事で、3チームに別れる。
図書室を出て行く際に翼が心配そうに宮森をチラリと見る
宮森はそれに泣きたい気持ちを堪えて小さく頷く。
廊下で松村と何やら話をしていた西垣が戻ると同時に内側から鍵を掛ける。
これで明日の朝まで二人きりなのだ。
チラリと確認してみると、現在時刻は夕方六時。外はまだ明るいが、東の空が少し暗くなっている気がする。
溜め息と共に肩を落とす。
あと、十二時間。別に仲良くお喋りをしなければならないと言う決まりはないのだが、二人きりだと言うのに無言なのも気詰まりだ。仕方ないので、佐川アオイについて考えてみる。
小柄で女の子のような顔立ちの少年。
西垣に憧れ、久保に嫌われ、辻にいじめられていた。
両親は父親が知人の保証人となった所為で離婚の危機に瀕しており、転校するのが決まっていたと言う。
学校も家庭も佐川アオイにとって救いにはならなかっただろう。
だから、屋上から飛んだ?
しかし、そのキッカケはあった筈だ。
恐らく島津が見たトイレでの暴力。そこで辻にこれまで以上の酷い事をされたのではないだろうか。
「あれ……」
そこでふと宮森は不自然な点がある事に気付く。
どうして佐川アオイはこの学校の屋上から飛び降りたんだろ?
手っ取り早く通っていた小学校の屋上でも良かった筈だ。いや、その方が自然だろう。
「カイチョー」
呼びかけると、壁際の椅子に腰掛けていた西垣が顔を上げる。
こんな時だと言うのに、相変わらず男前な顔だ。
「カイチョーたちが行ってた小学校って何階建て?」
そう訊ねると、思い出そうとしてか僅かに上を向き「三階建てだったな」と言う。
「普段は屋上にも行けたが、放課後は施錠されていたんじゃないか」
「ふぅん。でも、三階の窓からでも飛び降りる事は出来るでしょ」
何も屋上にこだわる事はないのだ。死ねると佐川アオイが思えた場所ならどこでもいい筈だ。
「確実に死ねなかったとしても大怪我するだけで学校からも家からも離れられるよね。そこまで考えていなかったとしても、咄嗟に死のうと思って何の関係もない高校に忍び込んでそこの屋上から飛び降りようとするかな」
宮森の独り言に西垣が怪訝そうに顔を顰める。
「何が言いたいんだ」
「何か理由があるんじゃないかなって。たとえば、この学校に何か用があったとか」
「小学生が高校にどんな用があるって言うんだ」
「それは分からないよ。でも、うぅん……誰かに会いに来たとか?」
宮森がそう言うと、西垣が席を立ち本棚の奥へと消えてしまう。何事かと宮森が追い掛けると、新聞の縮小版を捲っていた。
「何してんの」
「当時、いじめで自殺なんて大事件だったから新聞にも載っていた筈だ」
「そうなの?」
「ああ。学校側はいじめを認めなかったが、小学生の自殺なんて記者には他に理由がないと思えたんだろうな」
西垣の言葉通り、程なく目当ての新聞記事を発見する。
これまで西垣や松村から聞いたのと同じ内容だった。ただ、佐川アオイの容態は意識不明の重体となっており、続報雨もないようで生死についてはハッキリと分からない。
「これが?」
「佐川が飛び降りたおおよその時間が書いてある」
目を凝らすと、西垣が指差した箇所に『物音に気付いた生徒たちが発見した』と記述がある。
「時間なんて書いてないけど」
「授業中なら教師や職員が真っ先に駆けつける筈だ。そうじゃなくて生徒が発見したって事は、休み時間か放課後と言う事になる。島津の話から放課後の……午後四時か五時、それぐらいと思っていいんじゃないか」
へぇ、と感心する。
だが、すぐにそれがどうしたんだと首を傾げる。
宮森の疑問に答えるように西垣が言葉を続ける。
「八年前のその時間、校舎にいた人間に佐川は会いに来たんじゃないのか」
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