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極上の趣味 26

生徒会室に行く途中、森橋兄弟と会ったので一緒に向かう。
翼の話によると、ヨシユキはトイレに行くと言って出て行ったらしい。
「だからって一人で行かせてどうするんだ」
呆れたように西垣がそう言う横で宮森も頷く。
校舎内に悪意を持って戸田を突き落とした人物がいるのだ。そんな状況で一人にするのは余りに危険だ。だからこそ、数人のグループに別れたと言うのに何をやってるんだ。
「すみません、すぐそこだったのと久保先輩が一人でいいからって言ったのでつい」
そう言われたら宮森も引き下がったかも知れない。
何しろ相手は三年生だ。翼は生徒会役員ではあるが、一年生の言う事に従ってくれるとは思えない。
「帰りが遅いと思って兄さんと迎えに行こうと思ったら声が聞こえたので」
そこで慌ててやって来たのだが、時既に遅く、ヨシユキは辻を殺してしまった後だった。
「でも、本当に久保先輩が?」
辻の死体を見ていない所為か、翼が疑うように問い掛けて来る。
「本人がそう言ったし、吉野も見ていたらしい」
西垣の言葉に吉野がビクッと震える。どうやらまだ怯えているらしい。
無理もない。チャラい外見をしているが、実際はかなり気が弱いのだ。
生徒会室に入り、吉野を奥の席に座らせる。その正面に立った西垣が「何があったのか話せ」と促す。
「あ……えっと、」
口籠るばかりでハッキリと言わない吉野に痺れを切らしたのか、西垣が椅子の足を軽く蹴る。それに「ヒッ」と喉の奥から悲鳴を漏らし、漸くポツポツと話し出す。
それによると、ヨシユキが資材室のドアをノックして、迎えに来たからもう外に出られると言ったらしい。
辻たちが別行動になるまでヨシユキの姿はなかったのだ。しかも、佐川アオイの事件とは無関係。
そこで辻に言われて吉野がドアを開けると、ヨシユキが強引に押し入って来たそうだ。
揉み合ってるうちに吉野は廊下に押し出され、中から辻とヨシユキが乱闘しているらしい物音が聞こえたと言う。
それに倒れた机を思い出し、宮森は小さく頷く。
辻は何やら怒鳴っていたが、吉野にはその内容を聞き取る事は出来なかった。ただ、獣の叫び声のような物が聞こえて、それが辻の声だと言うのだけ分かったそうだ。
そのまま呆然と座り込んでいると、西垣と宮森が来た。そういう事らしい。
話を聞き終え、全員がそれぞれ考え込む。内容は恐らく同じだろう。
どうしてヨシユキが辻を殺したのか。
校舎に閉じ込められたのは、佐川アオイの復讐だとばかり思っていた。
手紙で呼び出された三年生は全員が当時同じクラスだったのだ。だが、ヨシユキは違う。
小学校に上がる前にあった事件の所為で、ヨシユキは親戚に預けられ他の学校に通っていたのだ。こちらに戻って来たのは、高校に入ってから。
ならば、佐川アオイがいじめられていた件に関与している筈がなかった。
「え、ちょっと待って」
混乱して来て、宮森は口に出して呟いてしまう。
ヨシユキが辻を殺したのは、校舎に三年生が閉じ込められたのとは別の事件なのだろうか。
以前から辻を殺そうと思っていて、チャンスとばかりに実行した?
偶然だとしたら、それを裏付ける根拠が必要だった。
「ヨシユキさんは辻さんと何かトラブルでもあったのかな」
宮森の言葉に西垣が「分からない」と首を振る。
「辻はかなりの問題児だから校内で浮いていたし、ヨシユキも親しい友人はいないようだったが」
数年間、地元を離れていたとは言え、過去を知っている者は複数いるのだろう。
だからヨシユキが遠巻きにされていたと言うのは宮森にも納得出来た。
「松村さんも?」
「基本的に松村は面倒見がいいし、誰とでも仲いいように見えるが……特別親しいと言う訳でもないだろうな」
言葉は悪いが八方美人と言う事か。
何となくそれに頷き返し、「あ」と声を上げる。
他の四人が怪訝そうに見つめて来るのを無視して宮森は保健室に向かう。
「宮森先輩!」
翼が慌てたように呼び止めて来るのに振り返らずに答える。
「保健室に島津さんと久保さんが二人っきりじゃないか!」
犯人にとって本命だった辻が殺害された事で、もしかしたら事件はこれ以上起こらないのかも知れない。だが、その確証はないのだ。
こんな状況で女子二人と言うのは、如何にも狙って下さいと言っているようなものだ。
宮森の言葉に背後にいる翼がハッと息を飲む。
「一緒に行きます」
それに司も頷き、宮森たちは三人で保健室に向かう。
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