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極上の趣味 29

暫く待ってみたが、特に何も起こらない。
宮森はジリジリとした思いで何度も時計を見上げていた。
辻が死んだ事で、佐川アオイの復讐は果たされたのかも知れない。もし、犯人がそう思ったのなら、これからどうなるだろうか。
校舎の鍵が開き、このまま解放されるだろうか。だが、それは楽観し過ぎだろうと思う。
辻は死んだが、他の三年生は生きているのだ。
表立ってはイジメていないようだったが、久保もそれに加担していたようだし、吉野は新しい生贄として佐川アオイを差し出す事によって難を避けた。
それを犯人が許すとは思えなかったのだ。
だいたいからして辻一人を殺したかったのなら、他の三年生を呼び出す必要がないのだ。
目くらましと言う可能性もあるにはあるが、犯人の目的が辻一人ではないと考えた方がスムーズだろう。
ならば、先ほどの宮森の説を逆にしてみたらどうか。
本命を最後に残すのではなく、先に始末してしまう。殺したい順に殺すのだ。
それなら途中で邪魔が入ったとしても、殺せなかったのはどうでもいい者だけと言う事になる。
もし、そうだとしたら辻を殺したのがヨシユキと言うのは矢張りおかしい。
ヨシユキに何かしらの動機があったとしても、こうもタイミングよく辻を殺せるものだろうか。
時計の針がカチッと動いて、八時二十分を差す。
その音を合図にしたように、島津が立ち上がる。
「トイレ行きたい」
「え、でも一人だと危ないですよ」
慌てて止めようとするが、島津が「我慢しろって言うの?」と苛立った声を上げるので、それ以上は言い返せない。
だが、宮森が付いて行く訳にもいかないのだ。カーテンの奥では久保が眠っているのだから、保健室を離れられない。どうしたものかと考えて、妥協案を出す。
「じゃ、保健室の前の廊下にいます」
それならトイレも見えるし、保健室への侵入者も防げる。
宮森の言葉にコクンと頷いた島津が廊下を歩いて行く。
その後ろ姿を見送り、特に何をするでもなく、保健室のドアに寄りかかる。
島津の姿が見えなくなり、スマホで時間を確認すると二十二分だった。五分もあれば戻るだろう。そう思ってスマホをしまうと、ガタンと物音がしてトイレの方向から島津の悲鳴が聞こえて来る。
「島津さん!」
咄嗟に背中を浮かせてトイレへと走る。
保健室や廊下と同じくトイレも暗闇に包まれていた。
スマホを翳して探すと、すぐに島津が床に倒れているのを見つける。
「島津さん、何があったんですか!」
抱き起こし声を掛ける。島津はイヤイヤするように首を振るだけで何も言わない。
取りあえず廊下まで連れ出そうとするが、混乱しているのか島津が抵抗する。それを無視して引きずるようにして運び出し、怪我をしないないかチェックすると、左腕から血が流れていた。
何とか保健室まで戻り、明かりをつける。
ぱっくりと開いた傷跡からして、恐らく剃刀か何かで切り付けられたのだろうと思う。
血を拭き取り、消毒薬を振りかける。
そうしている間に騒ぎを聞きつけたのか、西垣がやって来る。
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