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極上の趣味 30

島津が怪我した経緯を伝えると、西垣が難しい表情で二人を見る。
「他の人たちは?」
宮森が問い掛けると、「全員、図書室にいる」と答えが返って来る。
「え、ヨシユキさんも?」
辻を殺したヨシユキを他の人と同じ所に置くのはちょっとどうなんだろう。
そう思うが、隔離したくても人員不足でそう出来ないのだろう。
松村と一緒にいさせるのは可能だが、そうすると森橋兄弟と吉野が一緒になってしまう。表立って揉めている様子はないものの、先ほどの話からすると兄の司は吉野を嫌っているようなのだ。かと言って入れ替えてみたところで意味はないだろう。
それに西垣は自由に動ける方がいい。これは宮森の直感だったが、間違っていないと思う。
「それより」
難しい表情をしたままの西垣がそう口を開くので、何事かとその顔を見上げる。
よく見ると、それは難しいと言うよりも不可解そうだ。どうしたんだろう。
ジッと見つめる中、西垣がベッドの置かれた方を見て言う。
「どうして久保は眠ったままなんだ?」
「え……だって、薬飲んで」
「ああ、それは聞いた。だが、睡眠薬と言う訳ではいんだろう。島津の声は離れた所にいた俺にも聞こえたし、その後、バタバタしてたんじゃないのか?」
言われてみれば確かに廊下で島津を宥め、保健室では傷薬を探してあちこち引き出しを開けたりもした。それなのに、依然として眠り続けているのは……どうした事だろう。
島津に目を向けると、ハッとしたように息を飲んでカーテンに手を掛ける。
「雪華……?」
そっと声を掛けカーテンの中に入り、再び悲鳴を上げる。
それに動いたのは西垣の方が早かった。
サッとカーテンを引いて、ベッドに近づく。
宮森はその後ろから覗き込むしか出来ない。
ベッドの脇に呆然と立っている島津。それを横に退かして久保の手を取る西垣。
そして、久保の首には男子のネクタイが巻かれていた。
「え、どうして……」
訳が分からず呟くが、それに答えはなく西垣の「死んでいる」という言葉が保健室に響く。
宮森は慌てて席を立ちベッドに近づく。
西垣の言った通り、久保は絶命していた。
恐らく首に巻かれたネクタイが凶器なのだろう。顔が腫れており、所々に鬱血したらしい痕跡もある。
ネクタイの端を掴んでそっと引くと抵抗したのか、首に爪痕らしき縦線が幾つも走っていた。
「そんないつ……」
保健室に来てから、久保が一人になった時はない。最初は松村と島津が、その後は島津がずっと傍にいたのだし、宮森はそこに合流したのだ。
もし、あるとすれば先ほどの島津が切り付けられた時ぐらいしかない。だが、それも僅かな時間だ。時計で確認した訳ではないが、五分も経っていなかっただろうと思う。
「そのネクタイ……ヨシユキのじゃないか?」
「え?」
宮森は爪で挟むようにして持っているネクタイに目を向ける。
夏服でもネクタイの着用は義務づけられている。
生徒会にいる西垣と翼はネクタイを締めているし、松村も同じだ。司は確か胸ポケットに丸めて入れていたように思う。
ヨシユキはどうだったろう。
どんなに思い出そうとしても、ベストを着ていたとしか思い出せない。
「じゃ、ヨシユキさんが?」
「それは無理だろう。ヨシユキがここに来るチャンスはなかった筈だ」
そう、ヨシユキが久保を殺害するのは不可能なのだ。
辻を殺すまでヨシユキが森橋兄弟と一緒にいたのは二人の証言から明らかなのだ。その後は松村に連れられて図書室に行った。
ならば、辻を殺す前に保健室で久保を殺したのか?
それも無理だろう。
ここには島津と松村がいたのだ。ヨシユキが一人で来たら訝しく思う筈だし、二人ともそんな事は一言も口にしていない。
答えが出ないまま、宮森は凶器と思われるネクタイを保健室にあったビニール袋に入れる。それを横目で確認した西垣が「移動しよう」と言う。
「こうなったら全員が一カ所に集まった方がいい。行くぞ」
それに反対する理由はなかったので、宮森は島津を促して西垣の後に従う。
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