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極上の趣味 33

「雪華は昔から人の物を欲しがった。服も玩具も、何もかも。男と女で性別が違うんだから俺の服なんか欲しがったところで着やしない癖に、自分の物になるまで駄々を捏ねて泣き叫ぶんだ。だから親も困り果てて、仕方なしに俺と雪華には揃いの服を着せていたよ」
小さい時ならそれでも良かったのだろう。寧ろ微笑ましいと思うかも知れない。
だが、成長して物心付いたら……久保雪華の我が侭は問題になる。そして、その通りになった。
「幼稚園に通い始めてすぐ雪華の様子がおかしい事に俺は気が付いた。俺が友達と遊んでいると、必ず間に入って来るし、その反対の時も俺を無理矢理呼びつける。何度かそれを繰り返すうちに俺にも雪華にも友達はいなくなった。子供でも面倒臭いって思ったんだろうな。そんな時だよ、彼に話しかけられたのは」
そう言って自嘲するようにヨシユキが口元を歪める。
「俺は雪華に引きずり回される所為でかなり引っ込み思案だった。子供だろうが大人だろうが、誰に対してもマトモに口をきけなかったんだ。でも、彼だけは違った。彼といる時だけは自分の思う事を自由に喋れたんだ」
ヨシユキの言う『彼』とは近所に住んでいた大学生だろう。
どうして大学生の彼が逮捕され、ヨシユキが親戚の家に預けられたのか。
ここまでの話から推測は出来る。
きっと、二人の仲に気付いた久保が引き裂いた。大人に告げ口したのだ。
「突然だった。制服姿の警察官に囲まれて、俺は彼から引き離された。何があったのか、その時の俺にはさっぱり分からなかった。両親は泣いているし、他の大人たちも大丈夫って繰り返すばかりで誰も俺に説明なんかしてくれなかった。でも、その向こうで雪華が笑っていたのだけはハッキリと覚えている。俺の物は何でも欲しがって取り上げる癖に、最初から興味なんかないからすぐに捨ててしまう。それと同じ事をまたしたんだって、雪華の顔を見ていたら分かった」
「それで、ヨシユキさんは親戚のお家に?」
「ああ」
宮森の質問にヨシユキが静かに頷く。
久保雪華という女の子が厄介な性格をしていたのは分かった。
恐らく、双子であるヨシユキも久保の所有物だったのだろう。だから、他に友人を作る事を許さなかったし、大学生と親しくなったヨシユキに対して制裁しようとしたのだ。
「こっちに戻って来てすぐ彼に謝ろうと思った。逮捕と言っても証拠なんかなかった筈だから、起訴はされなかっただろう。雪華のした事と、俺のした事、それを思えば到底許される事じゃない。でも、他にどうしようもなかった。当時、彼が住んでいたアパートに行ってみたけど、引っ越した後で行方は掴めなかったよ。でも、俺は諦めなかった。彼が俺にしてくれた事、それは俺にとって言葉に出来ないほどの癒しだったんだ。その恩も返したかったし、出来る事なら幼稚園の頃と同じような付合いをしたかった。こう思うと、俺も相当我が侭だよね。でも、どうしても会いたかったから根気よく彼の行方を探し続けたんだよ」
そう言うと、息を吐き出し置いてあったペットボトルを取り上げキャップを開ける。
喋り疲れたのか、ゴクゴクと喉を鳴らしてお茶を飲む。
そんなヨシユキを眺めながら宮森は「それで……?」と続きを促す。
「死んでいたよ」
「え?」
「幼児誘拐、それも性的な悪戯を目的とした誘拐と思われて、彼の精神は追い込まれたんだろうね。俺が親戚の家に預けられていた間に実家で首を吊ったらしい」
ヨシユキが空になったペットボトルを傍の机にコツンと置く。
「だから、俺が雪華を殺したんだよ」
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