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トランプ兵の反乱2

先生の相談は矢張り春日さんの言った通り、最近起こっている通り魔事件についてだった。
何となく噂でしか知らなかったのだが、先生は流石に詳しく知っていた。
これまで学校側が知っているだけでも被害者は三人。そして意外な事に被害届を出しているのは二人目に襲われた生徒だけらしい。
残り二人の内、先週被害にあった生徒は今でも家に閉じこもったきり、誰とも口をきこうとしない。そして一人目は「別に何ともないから」と、どうやら外聞を憚って警察に訴えていないようだと先生は言う。
「ウチの学校の生徒しか被害に合ってないのかにゃ?」
至って気楽そうに春日さんが質問すると先生はそれに頷く。
「ああ、近隣のどの学校の生徒も被害には合ってないらしい」
「ふぅん、」
自分から質問した癖に余り興味なさそうだ。
「それにしても、そんな相談事だったとは聞いてませんでしたよ」
どこか怒った様子で口を挟んだのは五十嵐さんだ。
生徒会室に戻らず、そのまま我がミス研の部室に腰を落ち着けてしまっていたのだった。
「ああ、済まない。何て言えばいいのか分からなくて、」
「ま、結果オーライっしょ」
春日さんが事もなげにそう言う。
「にしても、一般の高校生がどうこうできると思っているのか?」
それはご尤も。
「一般?じゃ、五十嵐に一般の定義をして貰おうか」
春日さんがそう言い返すとユノさんまで興味津々と言った様子で身を乗り出す。
何だか春日さんって、五十嵐さんには少し攻撃的なような気がする。
五十嵐さんは溜息をついて眉間に指を当てる。
「分かったよ。お前らは一般じゃない。普通なんかであるものか」
投げ遺りな口調なのは諦めを含んでいるからなのか。
「え…と、その中に僕は入ってないんですよね?」
思わず確認すると、五十嵐さんが奇妙なモノを見るよような目で僕を見る。
「天然…?」
「それが真澄ちゃんのイイ所」
「そうだよねぇ」
順に五十嵐さん、春日さん、ユノさんだ。
何か言い返してやりたかったが、それより先に先生が口を開く。
「何も犯人を捕まえてくれって訳じゃないんだ。この先、被害を食い止められるような何か…具体的でなくてもいいから何か案はないか?」
その言葉に四人とも顔を見合わせる。
そんな事、学校側の考える事じゃないの?
「あ、分かったぁ。先生はカンニングしようとしてんだ~」
ほのぼのとした声でユノさんが言う。
「か、カンニング?」
「そ。職員会議でそういう宿題が出たんでしょ?で、自分では思い付かないからヒトに考えさせようってんだぁ」
ビシィと先生の顔に指を差す。余りお行儀がいいとは言えない。
先生はユノさんの言葉に少し考えて、意外な事に頷いて見せる。
「そうなんだ。助けると思って頼む」
そんな先生をジッと見つめて春日さんが言う。
こんな時の春日さんは何を考えているのか、はっきり言って良く分からない。
「いいですよ。策を講じましょう」

「考えて置きま~す」と三田先生を追い返してから春日さんが大きく伸びをする。仰け反り過ぎて椅子から転げ落ちそうだ。
「春日には何か妙案があるんだな」
五十嵐さんが見透かしたように冷たい声で言う。
「ん?妙案?そんなモノある訳ないじゃん」
軽い調子でそう言うとギャハハと品のない笑い声を上げる。
「え?そうなの?シオン、何か思い付いたんじゃなかったの?」
ユノさんまで意外そうに声を上げる。
それに春日さんが鼻白んだように頬杖をつく。
「何だよ、ユノまで。ま…確かに事件解決へ向けてできる事は思い付いた事は思い付いたんだけど、」
「なぁに~?」
のほほんと訊ねるユノさんに小さく溜息をつき、短く答える。
「犯人逮捕」
「え~?!」
流石に驚いたのだろう、ユノさんが大袈裟に仰け反る。
「シオン、そんな簡単に言うけどどうやって捕まえるのぉ?」
春日さんがその言葉に僕を見る。
「え?」
何で僕を見るんだろ。しかも何だか凄く困っているような顔で…?
「まぁ、こればっかりは強制できないんだけどねぇ」
きょとんとしたままの僕に春日さんは苦笑を浮かべる。
「春日、それは流石にマズいだろ」
「分かってるよ」
五十嵐さんの言葉に面白くもなさそうに即答する。
何だか二人だけで会話が成り立っているようで少し面白くない。
そう思ったのは僕だけでなく、ユノさんもそうだったようで癇癪を起こした子供のように意味もなく手を振り回す。
「何なぁに、二人だけで分かっちゃって。何だかイヤ~な感じ」
うふふ、と唇に指を当てて笑う春日さん。うん、これは何だか少し似合う。
「ま、そういう訳で続きはまた今度。って、ユノにはお迎えが来てるしね」
春日さんの言葉にユノさんがきょとんとする。
「お迎え?」
その言葉とほぼ同時にドアがノックされる。物凄く控え目な感じ。
「ん~?」
ユノさんが首を振りながらドアに向かう。
その後ろ姿を眺めていると春日さんが立ち上がる。
「今日はお開きにしよっか」
「ぅきゃぁ!」
ユノさんの悲鳴が春日さんの言葉に被さるように響く。
「何、何ぃ、何でぇ~?!」
怒っているのか拗ねているのかユノさんが叫ぶ。
何事かと腰を浮かし掛けた僕を春日さんが目で止める。
「いやぁ~!!」
そんな叫び声を残してユノさんが走り去る足音。パタパタとゴッツイ靴はいてた割に軽い音がする。
その後を「あ、ちょっと」とかいう声が追って行く気配。
たっぷり三十秒待ってから春日さんに訊ねる。
「何だったんですか」
「だからユノを迎えに来たんだろ」
長い髪を鬱陶しそうに払い除ける。
「…あ、佐波さん?」
「そういう事。じゃ、私らも帰るとしよっか」
ニッと美少女にあるまじき開けっ広げな笑顔で言う。
それに従い立ち上がろうとすると五十嵐さんが止める。
「春日、」
「あん?」
「忘れてんじゃないのか?」
五十嵐さんの深刻な顔に春日さんは暫し思案する。
何だか突然、流れた緊張した空気に意味もなくハラハラしてしまう。
「…何だっけ」
物凄い低い声で春日さんが問い返す。
「玲子さんとの約束」
五十嵐さんの短い言葉に春日さんは思いきり顔を顰める。
「うっわ、今日だっけ。聞かなかった事にできないかな?」
「俺は構わないが後々、困るのは春日だと思うが?」
「チェー、」
不貞腐れたように頬を膨らませる。
「生徒会終わったら俺も帰るからそれまで時間潰してるか?それとも先に行くか?」
何だか分からないが兎も角、春日さんには何か先約があるらしい。ま、僕としては別に一緒に帰らなくても構わないと言えば構わないのだが。
「仕方ないなぁ。適当に時間潰して行く」
詰まらなそうに呟いた春日さんと目が合ってしまう。
何だかとても厭な予感がする。
しかし五十嵐さんはそれに気付かなかったようで「んじゃ、」と言い残して部室を後にする。
残ったのは僕と春日さんの二人。
春日さんは腰に手を当て仕切り直すように息を吸い込む。
「真澄ちゃん、ヒマだよねぇ?」
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