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トランプ兵の反乱3

五十嵐さんが立ち去った後、どこからか取り出したトランプでゲームをした。
しかし何をしても所詮、二人しかプレイヤーはいないのだ。
はっきり言って…ツマラナイ。
そんな僕の様子に気付いたのか、春日さんが鮮やかな手付きでカードをシャッフルしながら「真澄ちゃん、」と呼ぶ。
何か企んでいる。絶対そういう顔付き。
「…」
疲れていたので目だけでそれに答える。
春日さんがそんな僕に取って置きの笑顔を見せる。
「今日は夕飯も一緒に食べようね」
小さな溜息をつく。それを何と受け取ったのか春日さんは更に媚びるような笑みを浮かべる。
「ダメ?」
「…構いませんが、余り遠いのは勘弁して下さい」
「あ、それは大丈夫ぅ。五十嵐ん家だから」
「え?五十嵐さんの家ですか?」
意表をつかれ、キョトンとしてしまう。
「それは…別に構いませんけど」
「やったぁ~」
間延びした声ではしゃぐ。
この人はどうしてこうなんだろう?
本当、綺麗系の間違いない美人なのにやってる事は小学生以下。
「あの、でもどうして?」
疑問はそこだ。
春日さんが五十嵐さんを苦手にしているらしいのは何となく分かっている。苦手と言うより煙たがっている。
それでも仲が良さそうにも見えるのだ。
大体からして春日さんが五十嵐さんの家に行くのに僕は何の関わりもない。
「ん~、一人で行くのが厭だから」
それなら何も僕でなくともいい訳で。ユノさんなら春日さんが声を掛けただけで喜んで付いて行くと思う。
「あっは、ユノにはお迎えが来てたじゃ~ん」
ああ、佐波さんの事か。
「私って優しいでしょぉ?恋のキューピットって感じ」
唇を『け』の形にしたまま声を上げて笑う。
キューピットって確か天使だった筈。だけど、僕には春日さんはどう見ても天使より悪魔に近いような気がする。
オマケに何だか分からないけどハイテンションになってしまったようだ。
「まぁ、本音を言うと真澄ちゃんの方が『あの人』の好みかにゃぁって」
「あの人?」
「内緒」
その時、春日さんの鞄から気の抜けた電子音がした。
どうやら携帯電話に着信があったらしい。
鞄から取り出されてはっきりと聞こえるメロディはどう聞いても十数年前に流行ったゲームの音楽で。
何と言うか、それだけで酷く疲れたような気分になった。
小声で暫く話していた春日さんが手首に巻いた時計を見て「うわっ」と驚きの声を上げる。
それに吊られて僕も時間を確認すると、何と午後七時。
「ごめんごめん、今からソッコ-で行くわ」
電話を切った春日さんが僕を見る。
「ヤバいねぇ。校門開いてるといいよね~」
言葉とは裏腹にのほほんとしている。
しかし既に下校時刻は過ぎている訳で。
校門は案の定、閉ざされていた。
どうします?と振り返ってみると、何と春日さんは何も言わず門に手を掛け慣れた様子で裏門をよじ登る。それを呆れて見上げていると、早くしろと怒られてしまう。
「いつもこんな事してるんですか?」
「いつもじゃないよ」
バツが悪そうに春日さんが肩を竦める。
セキュリティはそんなに厳しくはないが、それでも警備員が詰めているし何かあったら直ぐに警報が鳴る筈だ。
「ああ、ヘ-キだよ。決まった時間に見回りする位で後は警備室でテレビでも見てんじゃない?それに万が一、見つかっても忘れ物したって言えば大丈夫。だってちゃんとココの生徒なんだもん」
そんなモノなのかどうか。
春日さんの言う通り、途中警備員と遭遇する事もなかったし警報が鳴り出す事もなかった。
「真澄ちゃん、こっちの道を行こう」
僕を振り返りもせずに黙々と歩き出す。
置いて行かれるのは何となく心細かったので慌てて後を付いて行く。
春日さんはするすると音も立てず猫のように薄暗い道を歩く。
何だか道幅が狭いな、と思い気が付く。
この道って!!
「春日さん!」
「うにゃ?」
僕の声に春日さんがキテレツな声を返すと同時に門影からサッと人が出て来る。
余りの出来事に呆然としてしまって僕は動けない。けど、春日さんは素早くその人物から身を躱すとあろう事かその背中に蹴りを入れる。
『ぐ』と『ぶ』の間の音で呻くが膝をつく事はなく、そのまま走り去ってしまう。
それを慌てるでもなく春日さんは見送り、「ありゃりゃ、逃げられちったよ」と笑っている。
何なんだ、この人は…。
呆然としていると、春日さんが首に手を当てるので慌ててしまう。
あんな蹴りを入れていたが実は怪我とかしてしまったのだろうか。
「大丈夫ですか?!」
「ん~?」
ビックリして動顛してはいたが春日さんが無事なのはその声の調子からも分かる。
「取れちゃったよ」
そう言うと首に巻いたチョーカーを示す。確かに真中にあった小さな十字架が今はない。
「う~ん、こりはちょっと考え直さないと」
「何をですか」
何事もなかったように歩き出す春日さんを追いながら訊ねる。
「いやはや…頭、悪くないなぁって」
「え?」
「あの状況で逃げるなんて判断力は優れてるって事じゃん」
そうなのだろうか。
僕だったら、どうなるか想像してみる。
遅い時間に歩いて来た女の子を物陰から襲う。が、思わぬ反撃を食らう。そのまま呆然とする。
或いはカッとなって更に襲い掛かる。
どちらにしても春日さんに掴まる。
逃げた『通り魔』も凄いが、それに反撃した春日さんだって凄いのだ。
一般的な女の子が見ず知らずの人間に襲われて反撃するだろうか、普通。
否、しないだろう。断固、する筈がない。絶対に女の子が通り魔に反撃したりする訳がない。
なのに春日さんは平然とした顔付きで僕を見ると薄く笑う。
「取っ捕まえてヤキ入れてやる」
そんな不穏当な事を言うと首に巻いたチョーカーの端をヒラヒラと振る。
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