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トランプ兵の反乱6

春日さんは何の説明もしないまま、僕を引っ張って歩き出す。
「ちょっ…、春日さん?!」
「なぁに」
「いいんですか?坂井さんの話は?」
「あ、もうい-の」
あっさりと、のほほんと言う。
それにしてもこの莫迦力。
本当に女なのかと、疑いたくなる程だ。
「それじゃ、何が『正解』なんですか?」
「あれ?」
きょとんとした顔つきで僕の手を離す。
それから「あれれぇ?」と言いながら僕の顔を覗き込むと呆れたように溜息をつく。
「まだ、分かんない?」
「全然」
きっぱり答えてやると春日さんは顳かみに指を当て「う~ん」と考え込んでしまう。
「あのね、」
突然、告げられた言葉の続きを期待してみる。
「ん~、でも分からないならイイや」
って、おい!!
つい心の中でツッコミを入れてしまいたくなる程、あっけらかんと言われてしまう。
そんな事言われて気にならない奴なんかいないっての。
僕の顔色を読んだのか、春日さんがポケットに手を入れ、小さく頬笑む。
「マスミちゃん」
「はい?」
改まったその口調に警戒しながらも頷く。
「ごめんね?」
唐突な謝罪の言葉に僕は返事すらできない。
春日さんは僕の返事など期待していないのか、そのままブラブラと廊下を進む。
「どこに行くんですか」
僕の質問にやっと足を止め、ゆっくりと答える。
「情報収集」
それ以上は言うつもりがないようだった。そのまま無言になり廊下を進む。
やがて僕にも春日さんの目指す場所が分かった。
生徒会室だ。
「やっほ~」
軽い声を上げながら入って行く春日さんに続く。
本来ならば一般生徒が気安く入れるような所ではない。
入学したばかりの頃は何も知らなかったのだが、ここ『生徒会室』は恐怖の場らしい。
今更、そんな事は気にしないがそれでも春日さんのように緊張感の欠片もない態度ではいられない。
「あれ、」
恐る恐る中に入ってみると、そこにはこの部屋の主・五十嵐さんの姿は見当たらず、顔見知りである服部さんが何やら書き物をしていたようだった。
「留守なの?」
「はい。何やら凄い剣幕でミス研に向かったようですけど」
「ありゃ、入れ違いだったか」
グルンと僕を振り返ると「どうする?」と聞いて来る。
別に僕は五十嵐さんに用はないし。
「また擦れ違ってしまうかも知れないんで、ちょっとだけ待ってて貰えませんか」
服部さんが手にしたボールペンを器用に回しながら言う。
「そだね」
あっさり、そう決断すると勧められる前にソファに身体を投げ出す。
「ふぁっ、」
ハイソックスをはいた足がその反動で跳ね上がる。
幾らパンツ姿とは言え、もう少し考えて欲しい。どこに目を向ければいいのか困ってしまう。
「五十嵐、怒ってたぁ?」
「かなり。今度は何をしたんですか」
「ん~、約束をすっぽかした」
服部さんの質問に何て事ないように春日さんが答える。
「約束?」
「ん。昨日、ちょっとね」
曖昧に言葉を濁す春日さんに僕が言う。
「五十嵐さんの家、行かなかったんですか?」
僕の言葉に春日さんが誤魔化すようにニマ~ッと笑う。
「う~ん、何だかメンドくなっちゃって。だって、ホラ。そのちょっと前に『通り魔』に襲われたじゃん?か弱い乙女としてはもうビビっちゃって行けなかったんだわぁ」
誰が『か弱い乙女』で、誰が『ビビって』たんだ。
平気な顔でその通り魔に蹴りを入れたのは誰なんだよ?
僕がこっそり呆れていると、服部さんが突然、椅子を鳴らせ立ち上がる。
春日さんと二人でそんな服部さんを見る。
「…襲われたんですか?」
今にも倒れてしまいそうに蒼い顔をしている。
それに気付かないのか、春日さんが普通の調子で答える。
「うん、そうなのぉ」
「…そう…だったんですか。それで犯人は?見たんですか?」
何だか様子がオカシイ。
何だか物凄い意外な事を聞いたように見える。
そりゃ、僕だって春日さんが襲われた時には驚いたけど、春日さんに被害者になる資格がないとも思えない。そもそも、服部さんが何故そこまで春日さんが襲われた事に驚くのか良く分からなかった。
「暗かったからねぇ。でも、これ以上続くようだと私にも考えはあるのよ~ん」
「考え、とは…?」
服部さんの質問に春日さんはニヤ~と笑って話を逸らす。
「服部ぃ、どしたの?」
春日さんの言葉にハッとしたように瞬きをして、取り繕うように言う。
「いえ、暑いですから何か飲み物いります?」
「欲しい欲しいぃ」
「麦茶でいいですか?」
そう言いながら部屋の隅に置いてある小さな冷蔵庫に向かう。
その後ろ姿がどこかおかしい。
背中を絶対に曲げようとしないのだ。
何だろ。
姿勢を良くする為に1メートルの定規でも入れているのかな?
どうでもいいけど、見ているこっちが辛くなりそうな姿勢だった。
「僕がやりますよ」
「あ、君塚もいたのか。じゃぁ、頼むよ」
今頃、僕の存在に気付いたようだ。
そりゃ、派手な春日さんと比べれば僕なんて存在感の欠片もないけど。
席に戻った服部さんが春日さんに話し掛けるのを背中越しに聞くともなく聞いてしまう。
「…あ、そう言えば怪我は?」
「ないよ~ん。でも」
僕が麦茶を春日さんに渡すと一気に飲み干してしまう。
「通り魔の方がしたかにゃぁ、怪我」
そう言うと服部さんを見つめる。
ついでなので服部さんの前にもグラスを置く。
春日さんの言葉に服部さんの目許がピクッと動く。
「つい、蹴り入れちゃったからなぁ。大した事ないとイイんだけど」
そう言うとウフフと笑う。
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